黄昏通信社跡地処分推進室

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実践カルボナーラ概論

カルボナーラ、いろいろ節約しようと思い生クリームを牛乳にしたり、卵黄3つのところを卵黄ひとつ+全卵ひとつにしてみたり、パルメザンチーズ大さじ3のところをパルメザンチーズ大さじ2+シュレッドチーズ大さじ1にしてみたりとかちまちまけちってたらさすがにあんまりおいしくなくなってきてしまった。物には限度ってもんがあるな。まあそりゃそうだよな。たぶんこのみっつのうちふたつまでなら大丈夫な気がするんだ。ていうかまあ、生クリーム買わない時点でそれカルボナーラなのかって気もするけども。
こういう「ここまでならいける」みたいな限界けちけち料理ブログみたいなのちょっと読んでみたい気がする。でもまあこの「いける」っつーラインがめちゃくちゃ人それぞれだから駄目だろうな。自分と近いラインの人のをたまたま見つけられたらめっちゃ楽しいと思うけど、そう都合よくいかないよな。

ひさびさにブログで CSS 書いて全然反映されねーと思いながら調べてたら CSS の適用順位を正しく知らなかったことが判明した。後から読み込んだほうが優先とだけ覚えていたけど全然そんなことなかった。大雑把に言えば id>class>element で、同じ階層だったらセレクタが多いほう、セレクタの数が同じなら後から読み込んだほうが優先されるのね。勉強になった。そしてそれを知って直してもなお反映されず、なんでだろと思ってたら普通に syntax error こいてた。あほー。それ直したら反映されました。よかったよかった。

いきなりステーキ

在宅勤務。最近在宅でかつひとりで食べるときはスーパーに行ってちょっと追加のおかず買うのがパターンになっている。健康上はあんまりよくない気もするな……。しかもこの日はアンガス牛ランプステーキみたいなのの小さめのやつが半額で出てて飛びついてしまった。いやー、これはおいしかったね。昼からステーキ食べるの最高だな。これで体重減らないとか言ってるからあほだなおれ。減るわけねえっつうの。

『家は生態系―あなたは20万種の生き物と暮らしている』 ロブ・ダン著/今西康子訳 白揚社,2021-02-19

家の中には、さまざまな生き物が住んでいる。もちろん、目に見える種類のものは限られているけれど、それでもけっこういるものらしい。特に窓枠とか見るといいよ、と本書には書いてある。おれはあんまりやろうとは思わないが。そしてもちろん、目に見えない生物はもっとごまんといる。細菌や真菌、それも大部分は名前すらついていないような微生物が、家の中にはうようよいる。ウイルスについては数えてすらいない。それで、平均すればヨーロッパの住宅で20万種、アジアの住宅はおそらくもっと多い、というようなオーダーらしい。
著者は熱帯雨林やアフリカなどで生態系の調査をしていた生物学者だったが、ある時期以降身近な環境の生物にも興味を向けるようになる。自分の研究室の学生が大学の裏庭でかつて成虫が発見されたことのなかったアリを見つけたのだ。自分たちはよく知っているつもりの環境を全然知らないのではないか。それから著者は全米や、あるいは世界の数ヶ国に協力者を募って、いろいろな生物の調査を始める。たとえば、シャワーヘッドの内側にはたいてい得体のしれないぬるぬるが生じて、そこには真菌が住んでいる。各国の調査者に自分の家のシャワーヘッドを外してもらい、そこからぬぐいとったぬるぬるを送ってもらう。部屋の隅にたまったほこりを綿棒で拭って送ってもらう(これはISSやミールまで調査対象を広げていて面白かった)。米国各州の家に住み着いているカマドウマについて、どんな種類のやつが住んでいるか報告してもらう。なにがわかるか? 思いもかけない発見がある。
シャワーヘッドにはけっこうたちのわるい菌が住み着いているらしい。高温+流水とそこそこに厳しい環境だが、だからこそそのニッチに合致する、非結核性抗酸菌というやつらが生き残るらしい。その中には毒性の高い奴が混じっていたりするらしくまあまあ馬鹿にできないとのこと。樹脂製のシャワーヘッドが、金属製と比べれば非結核性抗酸菌が繁殖しにくいんだそうだ(金属製だと他の細菌が死にやすいから)。とりあえず一度開けてみようかな……みたいな気持ちにはなる。
家の中の細菌の分布は相当地域差が大きいのだそうで、どの地域に住んでいるかということが家の中の細菌の種類と一番相関があるらしい。あとはもちろん家そのものの形態や生活スタイルに大きく左右され、開放的な環境であれば種類も多くなり、土から離れるほど細菌の種類は少なくなる。ただ、細菌が少なければいいかというとそうでもなく、むしろ細菌が少ないほうがアレルギーの発症率は上がるらしいことはどうやら確からしい。もっともこれについては実験をするわけにもいかず、さりとて細菌の種類数以外の条件が同じである集団というのを見つけることも難しいため、検証自体が非常に難しいようだ。本書で挙げられている研究はけっこう頑張っていると思うので、興味がある人は読んでみてほしい。
カマドウマはなんと日本から渡ってきた種が米国で幅をきかせているのだそうだ。(米国の)在来種に比べて身体が大きく、おそらく100年ぐらい前にどうやってか米国に入り込んでくると、文字通り人知れず版図を広げ、いまや最大勢力になりつつあるらしい。しかしこの身近に思えるカマドウマ、生態は文字通り全くわかっていないに近く、なんと何を食べているのかも不明だとか。そんなことある?? まあ、世界にはまだまだわかっていないことだらけ、ということなのかもしれない。

正しい知見なのか著者の主観なのかはわからんけど、いろんな細菌とか微生物に触れたほうがアレルギーとか特定の病気とかにはなりにくいよという主張が複数回登場するのが印象に残った。おれも個人的にはそういうのわりと信じてる質なんだけど、どうなんだろうね。

招集

また父から招集がかかったので実家へ。事案が事案だけに兄が頼りになった。なんとなく実現を信じていたプロジェクトは十年経ってもほとんど前進していなくて、事態はどちらかと言えば悪くなっている。たぶんあれは実現しないままになるのだろう。あるいは、とっくに手遅れになるか。父もすっかり気弱になっている。きょうだいがたくさんいてよかった。弟が作ったカレーがあったのでちょっといただいた。ジャワカレーに唐辛子を足したというその辛いカレーはなんか知らんけどやたら旨かった。うちの家族はなんでか知らんがおれ以外みんなカレー作りが上手い。
帰り、兄とふたりで帰る。まじでしゃべることがない。なにを話してもいいはずなのだがなにを話していいかさっぱりわからないみたいになる。こんなんでよくふたりで山登ってたなと思うが、あの頃も別に話すことなんてあんまりなかったのかもしれん。

2018 年総まとめ

まさかの 2018 年に触れた分総まとめ。今年何年だよ! いまさら誰が見るのかわからないがそれ言ったらもともとそうだしな。

『シルトの梯子』 グレッグ・イーガン著/山岸真訳 早川書房:ハヤカワ文庫 SF,2017

ISBN:9784150121600
ディアスポラ』と『白熱光』の間の時期に書かれた話で、内容としてもそんな感じ。「シルトの梯子」という数学的概念をイーガンがまさかこんなにエモく振り回してくるとは思わなかった。

『完全無欠の賭け』 アダム・クチャルスキー著/柴田裕之訳 草思社,2017-11

ISBN:9784794223067
賭けの話。オンラインベッティングで、状況次第では絶対負けない賭けができる話とか、なるほどという感じで面白い。

『超動く家にて 宮内悠介短編集』 宮内悠介著 東京創元社:創元日本SF叢書,2018-02

ISBN:9784488018269
冒頭の「トランジスタ技術の圧縮」がとにかくめちゃんこ面白い。他にもバカ話が山ほど入っててすごくいいです。

『事件』 大岡昇平著 東京創元社:創元推理文庫,2017-11

ISBN:9784488481117
たった一件の殺人事件を様々な角度から照らす異色作。ミステリではない法廷もの、とでも言えばいいかな。地味だけど読み応え抜群。

『フォークの歯はなぜ四本になったか 実用品の進化論』 ヘンリー・ペトロスキー著/忠平美幸訳 平凡社:平凡社ライブラリー,2010-01

ISBN:9784582766936
これは面白かった。実用品のデザインの進化。自転車、ファスナー、フォーク、ふせん、などなど。

『ダメ女たちの人生を変えた奇跡の料理教室』 キャスリーン・フリン著/村井理子訳 きこ書房,2017-02

ISBN:9784877713645
タイトルは微妙だけどいい本。これ読むと料理しようっていう気になれるんだよね。「別に毎日やらなくてもいい、得意な料理ひとつを時々やるだけでも全然いいんだ」

『ポリフォニック・イリュージョン 初期作品+批評集成』 飛浩隆著 河出書房新社,2018-05

ISBN:9784309026695
初期短編にしろ批評にしろ切れ味がすげー。ブログから抜き出してきた一文ですら素晴らしい。この人はもう。

『蜜蜂』 マヤ・ルンデ著/池田真紀子訳 NHK出版,2018-06

ISBN:9784140056967
これ今思い出してもよかったのでおすすめしときます。近未来、蜜蜂がいなくなってしまった社会。子供たちは受粉労働者として働かされる――2098年と、2007年と、1852年を結ぶ糸とは。

『このサンドイッチ、マヨネーズ忘れてる/ハプワース16、1924年』 J・D・サリンジャー著/金原瑞人訳  新潮社:新潮モダン・クラシックス,2018-06

ISBN:9784105910068
コールフィールド・サガを集めた短編集になぜか「ハプワース」を抱き合わせた本。おれハプワースはどうしても評価できんわ。お好きな人向け。

『宇宙背景放射──「ビッグバン以前」の痕跡を探る』 羽澄昌史著 集英社:集英社新書,2015-10

ISBN:9784087208078
当時の感想見たらこりゃー面白かったみたいに書いてあるけどもうあんまり憶えてない。流石に興味ある人向けかなあ。

『文字渦』 円城塔著 新潮社,2018-07

ISBN:9784103311621
これはめちゃくちゃ面白い。漢字というものを好きな人にはたまらないと思う。まじおすすめ。

『うなぎばか』 倉田タカシ著 早川書房,2018-07

ISBN:9784152097811
けっこうよかった。うなぎを題材にしたオムニバス。謎の叙情性みたいなのがある。

『千の扉』 柴崎友香著 中央公論新社,2017-10

ISBN:9784120050114
これはどういうわけか心に響くものがあったな。

『料理の四面体』 玉村豊男著 中央公論新社:中公文庫,2010-02

ISBN:9784122052833
冒頭のナイジェリアのシチューの話が圧巻。あとはそこまででもない。日常的に自分で工夫して料理する人なら面白いと思う。おれはそうではないので……。

『ゲームの王国』 小川哲著 早川書房,2017-08

ISBN:9784152096791
ISBN:9784152097019
これはめちゃくちゃ面白い。四の五の言わずに読め。

『台風についてわかっていることいないこと』  筆保弘徳,山田広幸,宮本佳明,伊藤耕介,山口宗彦,金田幸恵著 ベレ出版,2018-08

ISBN:9784860645557
台風の性質が「生まれつき」である程度予想できるみたいな話がめっちゃ面白い。気象に興味ある人なら楽しめると思う。

『君の話』 三秋縋著 早川書房,2018-07

ISBN:9784152097828
ヤングアダルト SF。このブログを読んでいる若者はいないと思うが、もしいたら是非。中年でもそれなりには楽しめるはず。

『自動人形の城:人工知能の意図理解をめぐる物語』 川添愛著 東京大学出版会,2017-12

ISBN:9784130633680
まあまあタイトル通り。意図を理解するということは本当に難しいんだよね。

『未来職安』 柞刈湯葉著 双葉社,2018-07

ISBN:9784575241068
冒頭の主人公の置かれた立場が秀逸。

『目の見えない人は世界をどう見ているのか』 伊藤亜紗著 光文社:光文社新書,2015-04

ISBN:9784334038540
著者のウェブページ、今でも着々と事例が積み上げられてて、それはなかなかすごい。

はてなハイク

俳句の何たるかについて、若き日の寺田寅彦夏目漱石が語ったことというのが凄くて、おれは四十もとうに過ぎてやっと俳句の何たるかがちょっとだけわかった気がする。

「俳句はレトリックの煎じ詰めたものである。」「扇のかなめのような集注点を指摘し描写して、それから放散する連想の世界を暗示するものである。」「花が散って雪のようだといったような常套な描写を月並みという。」「秋風や白木の弓につる張らんといったような句は佳い句である。」「いくらやっても俳句のできない性質の人があるし、始めからうまい人もある。」青空文庫 -- 寺田寅彦「夏目漱石先生の追憶」
特にこの二番目のやつがすごい。「扇のかなめのような集注点を指摘し描写して、それから放散する連想の世界を暗示するものである。」 今更と言われるだろうが、これを見ておれは心の中の膝を打った。単にその場面を十七文字で捉えるというだけでは圧倒的に不足している俳句の要件を、めちゃくちゃ端的に表している喩えで本当に見事だ。などと言っているがおれはただの素人なのでおれの評価は無意味だ。俳句を詠む人はこの言葉をどう思うのだろうか。きっと見事だと言ってくれると思うのだが。

父の日

この日が父の日。午前中、子供たちが遊びに出かけ、妻もちょっと買い物みたいな感じで出かけて、おやひとりになったなと思っていたら妻と子供たちが一緒に帰ってきて花をくれた。そういうことか! おれはそういうのほんとに気付かないのでいつもちゃんとうれしい。どうもありがとう。なんかめいっぱい青い汁を吸わせた薔薇であった。これはこれでちゃんと綺麗。
午後、昨日娘が帽子忘れたのでもう一度実家へ。ハーゲンダッツのアイスとかいただいちゃった。えへへ。CD がちゃんと供用されていた。
夜は商品券を使って駅のそばのちょっと高級なスーパーで総菜とか買う。うまく値引きのタイミングとかみ合ったのでけっこう山ほど買ったけどそこそこの出費で済んだ。めばちまぐろおいしかったな。食後には妻が焼いてくれたチーズケーキをいただく。これまでと少し違う方向の味でおいしかった。聞くと生クリームを使わないレシピなのだそうで、個人的にはこっちの方が好きだ。一時期コンビニとかでチーズケーキバーみたいなの売ってたことがあったと思うけど、あれが多分この味だったと思うんだよね。別にだから好き、というわけじゃないんだけど妻とまだ結婚する前デートの時によくあれ食べてたなあ、なんてことまで思い出したりした。ともあれごちそうさまでした。めっちゃおいしかった。