黄昏通信社跡地処分推進室

黄昏通信社の跡地処分を推進しています

吉村生,高山英男『まち歩きが楽しくなる 水路上観察入門』 KADOKAWA,2021-04-27

正直路上観察も暗渠歩きもだいぶ手あかがついたテーマではあって、一般的な知識としてもはや得るものはあまりなく、あとは写真とか個別の事例とかで少しでも面白いものに出会えたらもうけものだなというぐらいのところ。
前半に出てくる事例は面白く、よく調べられていて興味深かった。特に代官山の弁財天の話は発端も面白いし当事者に話を聞けていてよかった。後半の小ネタになると少し失速気味で、写真もあまり小さいとやはり説得力を欠くしブログに負けてしまう。普通にいい本と思うけど、数多あるこの手の本の中からこれを特に選ぶ理由はあんまり思いつかない。

2024-12以降の本の感想は最初ツイッターに書いた奴を加筆修正してこっちに載せてるんだが、この本の感想のツイートには著者のひとり高山英男氏から直接リプライがあって、感想ありがとうございます、励みになります、といったようなことが書かれていた。上の通りわりと突き放した感じで書いてたので少し恐縮した。

吉村生,高山英男『まち歩きが楽しくなる 水路上観察入門』 KADOKAWA,2021-04-27

正直路上観察も暗渠歩きもだいぶ手あかがついたテーマではあって、一般的な知識としてもはや得るものはあまりなく、あとは写真とか個別の事例とかで少しでも面白いものに出会えたらもうけものだなというぐらいのところ。
前半に出てくる事例は面白く、よく調べられていて興味深かった。特に代官山の弁財天の話は発端も面白いし当事者に話を聞けていてよかった。後半の小ネタになると少し失速気味で、写真もあまり小さいとやはり説得力を欠くしブログに負けてしまう。普通にいい本と思うけど、数多あるこの手の本の中からこれを特に選ぶ理由はあんまり思いつかない。

2024-12以降の本の感想は最初ツイッターに書いた奴を加筆修正してこっちに載せてるんだが、この本の感想のツイートには著者のひとり高山英男氏から直接リプライがあって、感想ありがとうございます、励みになります、といったようなことが書かれていた。上の通りわりと突き放した感じで書いてたので少し恐縮した。

季節の野菜

いろんな野菜を年中食べることができるけれど、菜の花はまだ季節感を強く残しているように思う。旬の菜花が店先に並ぶとからし和えが食べたくなる。きっちり1分茹でて冷水にとり、醤油にからしとだしの素を溶いたたれで和える。ぴりっとした苦みが春を教えてくれる。ささやかな自分だけの儀式。

柏木貴久子,松尾誠之,末永豊『南ドイツの川と町 ~イーザル、イン、ドナウ、ネッカー~』(新刊版) 三修社,2009-09-18

三人の著者がそれぞれタイトルの川に沿って旅をし、街の様子、土地にまつわる歴史、伝説や逸話などを気ままに語る。ゆるすぎず硬すぎず、様々に興味深い話が出てきてけっこう読める。
体系的に何かを身につけたいとか調べたいとかにはあまり向かないと思われるが、漠然とあの辺の川とか町とかってどんな感じなんだろ、というのを知るのにはとてもよい。ヨーロッパ(的ななにか)を舞台に物語を書こうとする人には参考になるかもしれない。
これは図書館の「今日返ってきた本」コーナーから借りて読んだ。こういうのが物理本の面白いところ。

劉慈欣著/大森望,光吉さくら,ワン・チャイ訳『時間移民 劉慈欣短篇集Ⅱ』 早川書房,2024-12-18

正直に言うと玉石混淆、それも石が多め、という短編集。Ⅱとあるから『円』に続く二編目かと思いきや、間に角川から二冊出ているので実質四冊目。となればこの落穂拾い感も頷ける。書かれた時期も質もまちまち。「時間移民」もタイトルだけで表題作にしてない?などと余計なけちまでつけたくなる。
とはいえ「思索者」はよかった。奇抜なワンアイデアに傍観者の人類をかませてエモいストーリーを語る。主人公とヒロインに名前すら与えない徹底ぶり。波形憶えてるのどう考えてもキモいだろ。そこまでひっくるめてSFかくあるべしと思わされる。抒情がすごい。これが本書のベスト。
巻末の「フィールズ・オブ・ゴールド」になるとあざといし強引さも目立つんだけど、ロマンチシズムが初期の梶尾真治並みで、なんというか若い。こういうのが著者の本領ではあるのだろう。中盤に並べられた丁儀ものを含む短編群もどれも悪くはないが、ページをめくらせる力は弱い。
ファンなら買ったらいいと思うが(まあもうとっくに買ってるだろう)、『三体』読むかどうか迷っててまずは短編集で様子見ようかな、という向きには他の短編集を薦める。

近藤一博『疲労とはなにか すべてはウイルスが知っていた』 講談社ブルーバックス,2023-12-14

疲労ってなんなのか。活動すると疲れるが、少し休むと少し回復する。いっぱい休めばいっぱい回復する。しかしそれってどういう仕組みなんだろう。また、慢性疲労症候群やコロナ後遺症においては患者は病的疲労、つまり休息しても回復しない異常な倦怠感を訴える。それは“普通の”疲労とはどう違うんだろうか。それらをひっくるめた機序について、人の身体に常在するウイルスをてこに迫っていく。炎症の源、常在するウイルス、うつ病に関連する遺伝子、サイトカイン。様々な要素がパズルのように絡み合って病的疲労がもたらされていることを、巧妙な実験で示していく。最終的に起きていることは存外単純だが、なるほどこれを突き止めるのは容易ではない。
covid-19の流行初期に喫煙者の罹患率が低いというデータがあって、それはおれも確か当時見たことがあったのだが、なんだこりゃ?と思ったきりそのあとすっかり忘れていた。本書にはおそらくそれは正しいと思われることとその機序、そしてなぜそれが黙殺されたかが書かれていて、それがすごく面白かった。とにかくニコチンとか、そういう一般的には身体に悪いとされているものがなにか効くみたいなことって、たとえデータがあってもほとんど相手にされないみたいなんだよね。そういうのってあんまり健全じゃないよなと思う。まあ、ニコチンは身体にいいんですみたいな宣伝に使われる害が大きいことは理解できるので、トレードオフはあるんだろうけど。
巻末には動物実験でドネペジルが有効であったことが示され、治験が始まると書かれているのだが、残念ながら2023年に行われたフェーズ2では有意な改善が見られなかったようだ。まあ、こうやって一進一退しながら研究は、医学は進むのだろう。
参照→https://jrct.niph.go.jp/latest-detail/jRCT2031220510
治験で改善が見られなかった以上この本に書かれていることがすべて正しいということはおそらくないのだが、それでもなお慢性疲労症候群/コロナ後遺症の機序に興味がある人には強くおすすめしたい。そんな人がいるのかどうかは知らないが。面白かった。

藤井一至『土 地球最後のナゾ 100億人を養う土壌を求めて』 光文社新書,2018-08-17

地球上の土はたった12種類しかない。もちろんごく大雑把な分類だが、とにかくもそうカテゴライズされてしまう*1。著者が世界をめぐって触れてきた12種類すべての土を紹介しながら、土と肥沃さについて語っていく。
地球は岩だが、それが細かくなっただけでは土とは呼べない。例えば月の表面にはやはり月が砕けた細かい砕片があるのだが、これはレゴリスと呼ばれ土ではないとされる。植物が微生物に分解された「腐植」があってはじめて土は土たりうる。その中でも窒素、リン酸、カリウム、そしてもちろん水、といった植物が必要なものを多く保持できるのが肥沃な土と呼ばれる。含まれる鉱物イオンの種類や土壌の酸性度で保持できるものは変わってくるので、肥沃さというのはかなり化学的な原理に基づく尺度といえる。土をそういう風に捉えたことがなかったので新鮮だった。その観点で分析していくと様々な土地の土が見えてくる。特に、南米大陸やアフリカ大陸は「古い」ので土に栄養分が乏しいという話は目から鱗だった。熱帯雨林の人口密度が低いのはこのせいもあるのかもしれない。
すごく面白かった。土の話もう少し知りたいかもしれない。著者は他にも本を出しているようなのでチェックしてみよう。

*1:逆に言えば細分化し始めればすべて違う土、ということにもなりかねないのだろう。