黄昏通信社跡地処分推進室

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「普通に異常ですよ」「どっちやねん」

ちょっと前に雑誌(多分週刊誌)の中吊り広告だか新聞広告だかに、今日日の若者言葉では「普通に」を「意外に」って意味で使う、みたいなことが出てて、それは明らかに違うってのはわかったんだけど、正しくはどうなのかってのがぱっと出てこなくて“引っかかった”状態をとりあえず維持しておいた。この状態にしておくと折にふれてそれについて考えるので、上手くいくとなんらかの結論に達するときがある(何の結論も出ずに自然に“外れて”しまうことも勿論多い)。
で、今回一応達した結論では、「普通に」は現在以下のふたつの意味で用いられていることになった。

  1. 「逆に」の反対語。
  2. 意図していない、他意がない様子。素で。

前者はちょっと妙な言い回しだけど、おれにはこれが一番ぴんとくる。例えばこんな会話。
「こないだ今更だけど『少林サッカー』観たよ」
「どうだった?」
「普通に面白かった」
ここで「普通に」を使うと、『少林サッカー』が持つ滅茶滅茶さとかあり得なさとかが「逆に面白い」のではなく、映画として観賞してもちゃんと面白い*1、という意味になる。だから、「逆に」が想定される文脈において、それを否定する働きがある。その点では上に書いた広告の「意外に」というニュアンスはこもっているんだけど、決して「意外に」という意味ではない。言葉を生業にする人が作った広告としては理解が浅過ぎると思う。記事読んでないからわからんけど。
これに対して後者はもう少し当たり前の使い方で、
先輩「Nくんもやっぱり『萌え』とか使ったりするの?」
おれ「ああ、普通に言いますよ」          (※この会話はフィクションです。)
という時なんぞは、別にそれが特別面白いからしているわけではない、という意味になる。こちらは本来の意味にまだ近く、そんなにひねくれた言葉でもないと思う。
面白いのは、前者の用法をした時に、大抵は「逆に面白い」⇔「普通に面白い」という対比になると思うんだけど、下のような例だと、
「こないだ初めて鍼打ってもらったんだけどさー」
「どうだった? あれ痛覚神経避けるから痛くないとか言うけど、」
「いや全然。普通に痛くて死ぬかと思った」
と、「案外痛くない」が前提になっているものの全否定で「普通に痛い」になっている。こんなところも含めて用法が広く、面白い言葉だなあと感じる。
#追記。
これについて50万の人が一歩進んだ考察をしてるので、興味のある人は読んでみるといいかも。
殿下執務室 -- 2005-01-08:普通に。
んで、この言葉が結構頻繁に使われているのには、近頃は「逆に」の文脈が敢えて「逆に」という明示をせずとも成立するようになってきてる、みたいな背景があるのかなあ、なんてことも思ったりするのだけど、これに関しては確証がないので、まあまた“引っかけて”おくことにしよう。

*1:映画として観賞してもちゃんと面白い:おれは『少林サッカー』を観たことはないので、この評価に他意はない。「逆に面白い」を共有しやすい題材として選んだだけ。