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『麦の海に沈む果実』 恩田陸 講談社文庫,2004(2000) ISBN:4062739275

ねたばれあります。というか、直接的なねた割りはしないけど、これから読もうと思ってる人は読まない方がいいかも。でも、だとするとなんのための文章なんだこれは。
『三月は深き紅の淵を』から派生した物語で、第四章に差し挟まれる学園ものの断片を独立した物語に仕上げたもの。『三月は深き紅の淵を』は作者も気に入っているようで、他にも『黒と茶の幻想』が生まれている。
まあ恩田陸らしいというか、学園の設定と人物は魅力的。ただ、雑誌連載の上でペース配分を誤ったらしいふしがあって、伏線をちりばめることと前半の展開を丁寧に描いているうちに相当な分量に達してしまっていて、最後ものすごくばたばたたたみにかかっている。というか打ち切りになった連載漫画みたいだった。物語としてはあまりよくできているとは言いがたい。ということで、作者の書く学園ものが好きでストーリーはまあそこまで期待してないや、という人にはおすすめ。恩田陸読んだことない人にはとても勧める気にならない。
文中の綺麗な女の子に関する言及は面白い。恩田陸は作中に結構この手のものをちりばめる癖があって、それも特に意図はなく単に書きたいから書いている、と思しきものも時々見られる。そういうところは嫌いになれない、というか結構好き。おれは。