黄昏通信社跡地処分推進室

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スピードの絶対値ってなんなんだ(その2)

実は絶対値の話は前回で終わっていたりしますが、タイトル変えるのもアレなのでこのまま行きます。「アレ」なんて片仮名で書いたりするとおっさんくさいですよネ。
前回の最後に、あるレースを勝つために必要なスピードの絶対値というのが決まっているとすると、その必要な絶対値はスピードの向きによって違うと書きました。これをちょっと視覚的なイメージにしてみましょう。画像無しで。
複数の馬の「スピードベクトル」(いま命名)を比較することを考えます。ある16頭立てのレースに出走する全馬のスピードベクトルを仮に矢印で表して、同一の始点から描きます。こうすると、始点から16本いろんな向きにいろんな長さの矢印がにょきにょき出てる図ができます。
そして、そのレースを勝つために必要なスピードを、全ての向きについてその図に重ねて描きます。ほんとはこれも矢印なんですが、終点だけプロットすることにしましょう。そうすると、中心からある程度の距離を持ったぐにゃぐにゃした閉曲線ができると思われます。これを「勝利曲線」とでも呼びましょう。勝利曲線の形と中心からの距離はレースによって異なります。その勝利曲線より外に矢印の終点が突き出るスピードベクトルを持つ馬が、そのレースを勝つのに必要なスピードを持っている馬だ、ということになります。
もちろん、こんな図は描けません。勝利曲線の形は出走馬と展開と馬場等とで決まって、それは事前に予測することは不可能ですし、同じメンバーでも毎回少しずつ違ってきます。出走馬のスピードベクトルにしても同じことで、これまでは便宜的に各馬に固有のベクトルがあるように書いてきましたが、その中でも幅はあります。展開や騎手の意思しだいで向きは違ってくるでしょうし、それに伴って絶対値も違ってくることでしょう。
しかしながら、勝利曲線の形はある程度予測することができます。皆さんだってしている筈です。端的に言えば、「好位から差し」の向きの部分が、大抵のレースでは一番凹んでいます。言いかえれば、大抵のレースにおいてもっとも低い絶対値で勝つことのできる向き(=ここでは脚質)は好位差しになります。もちろん例外はあって、裏開催の開幕週絶好の馬場状態で少頭数、というようなレースであれば、勝利曲線の形は多分ほとんど真円になるでしょう。つまりスピードの絶対値を問われるレースになる*1わけです。おおっ、なんか時々聞くフレーズ。逆にスプリンターズステークス辺りになると、やはり好位差しが一番凹んでいるには違いないでしょうが、他のレースに比べると「逃げるだけ逃げる」の向きの部分はものすごく出っ張っているに違いありません。
各馬のスピードベクトルも、ある程度は予測できます。幅があるとは書きましたが、よほど器用な馬でない限り全く向きが予想できないと言うことはありません。殆ど一方向しか持ってない馬も時々居ます。絶対値に関しても、過去の競走成績から多少は把握できます。
それらを重ね合わせれば、ひとつの予想にはなるでしょう。いや、レースの予想ってのはそもそもこういうもんで、これはそれをベクトルに喩えることで却ってわかりづらくしてるんだ、ってのは承知してます。してますよ? でも、レースや馬場状態による勝利曲線の形の変化、ってのはもう少し分析してみても面白いかなとは思います。まあどちらにしても抽象的過ぎて予想の役には立たないでしょうけど。
で、ここで次回に続きます。え、まだ続くの?

*1:スピードの絶対値を問われるレースになる:スピードの絶対値はタイムであることに注意してください。同じタイムで走破することは、前半が速いペースの方が容易です。即ちこの例における真円のような勝利曲線を持つレースでは、逃げ・先行が相当有利ということです。