少し旬を過ぎた感があるが、遅答問題について書いておこう。
まず確認しておきたいのは、現状のシステムではとにかくも遅答で時間稼ぎをすることは可能だということだ。ゲームのルールは暗黙のマナーなどではなくシステムで規定されるべきであって、プレイヤーがそのシステム内で勝つために努力するのはむしろ当然の行為だ。遅答するプレイヤーを責めるのはお門違いも甚だしい。おれだって同点から押し勝って残り７、８秒ならやっぱり時間いっぱい使う。それは全然構わないと思っている。
そのように明らかに勝ちが確定する場面以外での遅答がどれほどの意味を持つのかは、実はあまりはっきりしない。たとえば、次のような単純なシミュレーションを考えてみる。
- ８問勝負。
- １問終わるたびに、その問題を取った方が、「残り問題数を１問減らす」ことを選んでもよい。
これで例えば最初から２問続けて取ったとして、２回とも残り問題を減らすことを選ぶとしよう。すると 2-0 で残りが４問となる。これを逆転されるのは 0-3 の場合だけで、お互い実力が五分ならおよそ 1/8 の確率となる。
ところが１問も減らさずに８問勝負の最初の２問を取ったとすると、2-0 で残り６問となる。これを逆転されるのは 1-5 か 0-6 だけで、それは 7/64 に過ぎない。引き分けを無視しているから単純には言えないし、このシミュレーション自体かなり大雑把なものではある。だが、「減らせる」というのが逆転された瞬間から逆に不利に働き始める以上、おそらくは確率的にそう劇的に好転するものではないのだと思う。
しかし、×2 問題の存在を考えると、前半リードした側が逆転の可能性を摘むために遅答をするのは有効な作戦と言える。これは ver.1.1 になってより顕著になった。リードしている限り残り時間を潰し続ける、というのはシステム内での勝つための努力と言える。
さて、じゃあなんであれほど怒ってる人が居るのだろうか。というか正直、「構わないと思っている」と書いたおれ自身、相手にあからさまに時間つぶしをされるといらっと来るのは否めない。２ちゃんねるでは「時間内にたくさんクイズをしたいから」という意見が出ているが、肯けるもののそれだけでは微妙に説明し切れていない。
おそらく、最大の苛立ちは、「勝つための努力がクイズ以外の部分にある」ところにあるのだと思う。
QMA でも「スタンド」や「カンニング」は否定されるけど、それでも最終的に勝つためにできることはひとつしかない。１問でも多く、0.01 秒でも早く、クイズに正解すること。それだけだ。スタンドやカンニングでさえそこに向かうための手段である（是非は措くとして）。
そのシンプルさと比した時、特に技術も必要としない、退屈な時間稼ぎが勝ちにつながるという現状のアンサーアンサーのシステムには改善の余地がある。その矛先が遅答を使う人に向いてしまっているのが現在の状況なのだろう。遅答する人を叩いてもなんにもならない。問題はシステムにあるのだから。
ここまで書いた以上はシステムの改善案のひとつも書かなければなるまい。今考えているのは、実際の回答に何秒かけようともタイマーは一定の数値だけ減る、というものだ。必ずしも全ての問題で同じ秒数でなくともよく、（その問題の正答の文字数＋ｎ）秒、などでもよい。最初は回答中は時計が止まってその分時間を短くすればいいと思っていたが、「全部０秒押しして問題を回収する奴が現れる」という意見を２ちゃんで見かけて、確かにその通りなのでこうしてみる。
押すタイミングや展開によって問題数が変わるダイナミズムはアンサーアンサーの持ち味であって、それを殺すような変更はどうだろうな、とは思う。負けている時に取った逆襲の１問、速攻で打ち込めば逆転の可能性が残せる——そんなシチュエイションもなくなってしまう。それでも、ちょっと現状のシステムは辛い気がしている。
試合の終わるタイミングがずれるという副作用もあるが、まあやむを得ないところだろう。トレーニングをさせるなりプレイヤーデータを見させるなりチャットタイムにするなり西洋の城の映像を流すなりすればよろしい。システムが改善されるのならそのぐらいのコストはかけてもいいだろう。
もう一度書く。遅答は現在のシステムでは可能だ。勝つために使うのは構わない。おれも使う。遅答する人を叩くのは建設的じゃない。
しかし遅答は面白みをいくぶん損ねており、改善の余地はある。ならばシステムを批判するべきではないか。そして改善案を提示するのが建設的な態度ではないだろうか。
ところで
ここまで書いといてなんだが、印象としては遅答する人そこまで居ないよな、とは思う。だから逆にみんな遅答する人を叩くのだろう。「この少数派を大人しくさせれば上手く行く」という考えが（無意識にしろ）若干あるのでは。だけど、必ずしも多数派の思うようにすればゲームが面白くなるとは限らない。おれは上に長々と書いた理由によって「遅答が可能な現在のシステム」を批判する立場に立つ。みなさんはどうだろうか。
