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名前を残した馬たちへ2007 (6・最終回)

先日珍しく web 拍手頂いて、喜んでメッセージをチェックしたら一言だけ「名前を残した馬たちへ」って書いてありまして。わかったよ更新するよ!的な。実は最後の一頭だけどうしても書けなくて多分3ヶ月ぐらい止まってた。なにやってるんだ。
(1) → 名前を残した馬たちへ2007 (1)
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ユートカイザー(父サンデーサイレンス/母ユートジェーン,1994) 用途変更
南関東東京ダービー2着、スーパーダートダービー3着などがある馬。正直あまり憶えていないが、故障かなにかで4歳以降は殆ど使えなかったようだ。母が重賞勝ち馬ということもあってか種牡馬入り。中央競馬でもたった1頭ながら勝ち馬を出した。正直能力・血統共にここら辺が一杯一杯かなあという気はする。よくやった方ではないだろうか。ユートジェーンは若くして死んだらしく、仔を2頭しか残していないそうだ。それがこの馬とロードブレーブだから、生きていれば強い子をもっと産んでいたかも知れない。ちと惜しまれるところ。
ライブリーワンUSA(父 Halo/母 Swinging Lizzie,1985) 死亡
なんかわりと最近輸入された気がしてたけど違った。98 年春だそうだ。てことは死んだ時点でもおよそ8年経ってたことになる。ちょうど輸入された年に米国で BC ジューヴァナイル(←これ発音的には近いんだろうけどなんとも間の抜けた表記だな)を勝ったアンサーライヴリーが出ているのだが、種牡馬としてはそこがピークだった印象。産駒が走り始めた 2002 年からはリーディングサイアーランキングで 100 位台にこそつけているものの、EI は一番いい年で 0.74 、稼ぎ頭は未だに輸入前の産駒シネマパラダイス、ということで正直輸入は失敗だったのだろう。まあこういう馬も毎年何頭かはいる気はする、けど。
ラストタイクーンIRE(父トライマイベスト/母 Mill Princess,1983) 死亡
最初のうちは産駒が輸入され、そのうち本馬も来て、シャトルされたり再輸出されたり、出入りが激しいながらもかなりの長きに渡って日本と縁のあった馬。ドイツで死んだというニュースが流れたが実際にはアロースタッドで死んだという説が有力のようだ。日本でも活躍馬を出したが、早逝したアローキャリーや今や草競馬で走っているらしいオースミブライトなど、微妙に不遇な印象がある。緩急は苦手ながら格負けしない底力があって、中々好きな種牡馬だった。少し早死にかとも思うが、あちこちに種牡馬を残しているので案外父系が続くかも知れない。
ラムタラUSA(父 Nijinsky/母 Snow Bride,1992) 輸出(英国)
まあ全くの後出しではあるけど、結局あらゆる意味においてどうしてこの馬を輸入しちゃったんだろう、ということに尽きる。競走において見せたパフォーマンスに関しては伝説級だったが、種牡馬として殆ど何も残せぬまま 10 年以上重ねてしまった年月の陰でその伝説もかすみつつある。日本においては、特に種牡馬としての行く末がはっきりしてからのこの馬については「語っちゃいけないムード」みたいなものがなんとなくあったと思うが、失敗は失敗として認めなければなるまい。一番稼いだ産駒がタニノエタニティ、EI は一番いい年で 1.01 だから、かけたお金を考えればよく言って「大失敗」というところだろうか。勿論、競馬というのは様々な局面で賭けの連続であって、種牡馬の導入と言うのはその中でも最大の賭けに近い。だから結果だけを見て語るのはフェアではない。だが、そうは言っても、単純に一頭の種牡馬に投じる金額としては約 30 億円というのはあまりにも高過ぎた。その判断に至ってしまうまでにどんな事情や状況があったのか、いささか想像を絶するものがあるが、最善の選択肢を採ったとは到底言えまい。まあどのみち今後こんな大鑑巨砲主義的種牡馬導入がなされることもないだろうが。英国に輸出されるのは本馬にとってはプラスだろう。年齢的にチャンスは多くないが、多少たりとも活躍馬を出して欲しい。
リップカレントUSA(父 Devil's Bag/母 Slip Ashore,2000) 用途変更
タイキシャトルの従弟で、父が同じであるから4分の3同血。競走成績は1戦1勝で、宮城県種牡馬入りしたがあっさり用途変更となったようだ。産駒が居るのかどうかもわからない。4分の3同血とはいえ残りの4分の1がカーリアンからスリップアンカーになっているというのは日本においてはなんとも残念な替わりかたで、ちょっと厳しいかも知れない。まあそういう問題ではないけど。
レオンプライドUSA(父 Danzig/母 Sexy Slew,1993) 用途変更
新馬勝ちを含む4戦1勝。中央で走った数少ない産駒の中に朝日杯に駒を進めたビッグスマッシュが居る。累代が Danzig × Slew O'Gold × Secretariat で四代母が Sex Appeal だから、種牡馬にしたくなるのもわからなくもない。というか、実際そこそこ種付け相手も集めていたようだ。まあよくやった方かも知れない。
レザームーン(父ノーザンテースト/母ライツブリンキング,1992) 用途変更
ダートの 1400m で凄く強かった馬、という印象があるが、今調べてみたら6戦3勝だった。まあ悪くはないが。オープン大将というイメージもあって、これは実際正しく重賞は4回走って掲示板にも載れていない。ノーザンテーストの晩年の産駒らしく距離にも能力にもはっきり限界があった感じ。「3回化ける」のがノーザンテーストだから、あるいはもっと現役を続けられていれば伸びた余地はあったかも知れないが、いずれにしても一線級には届かなかったかな、という気もする。ノーザンテーストの父系もそろそろおしまいか。
ロードメイプルUSA(父 A.P.Indy/母メイプルジンスキー,1995) 用途変更
名前の通り、ロードホースクラブの馬。半姉にスカイビューティ、叔父にデイジュールが居る良血で、総額1億 5400 万円で募集されていたそうだ。競走馬としては中央で3勝どまりで、内訳も未勝利戦と 500万下×2だから到底期待通りとは言えまい。良血が買われて青森で種牡馬入りしたが、流石に活躍馬を出すのは難しかったようだ。エーピーインディも日本にすごく合っているとは思われないだけに、仕方ないところではあろう。競走馬の時点で少しリスクの高い導入だったかも知れない。

ということでこれで終わり。
年々「面白いものが書けている」という感覚(錯覚?)が薄れていて、正直もうこれ以上は無理なので今年で終わりとする。別に内容的にしんどいとかではなくて(むしろ競馬を観続ける上で定期的にしんどい部分と向き合うのは有意義だと思う)、単にちゃんと見てなくて面白いことが書けないから。企画自体は手前味噌ながら面白かったと思うので、これよりは面白いものが書けると思った人が居たら来年以降引き継いでくれると嬉しいけど、それも勝手な話だし、まあ。
個人的には密かに「スズマッハスズパレード種牡馬引退するまで続けよう」と思っていたのだが果たせなかった。てか二頭とも頑張りすぎ。まさか 26 歳まで種牡馬やってるとは……。