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『GIANT KILLING』 現在4巻 綱本将也/ツジトモ 講談社モーニングKC,2007-

モーニングで連載中のサッカー漫画。


リーグジャパン1部で毎年降格争いを繰り広げるチーム「イースト・トーキョー・ユナイテッド」(ETU)に、かつて ETU で選手として活躍したが若くして引退した達海猛が監督として就任する。達海はキャンプから風変わりな練習を導入し、選手たちは動揺したり反発したりしながらもなんとか進み始める。プレシーズンマッチでは強豪東京ヴィクトリーと対戦、いい試合をした勢いそのままにレギュラーシーズンに突入するが……。
4巻までで大体こんな感じ。
タイトルの「ジャイアント・キリング」は日本語なら「大物食い」。そのまま作品のテーマでもあり、主人公達海の“好物”でもある。1部とはいえ親会社を持たず、上位チームとははっきり差がある ETU を型破りな監督が率いて活躍に導く……というのは単純に感情移入しやすい構図だし、作画もキャリアが浅い割にはかなり上手くて読みやすい。この入りやすさがひとつの魅力であると思う。
その構図の中で、監督が主人公の漫画であるからある種当然ではあるのだけど、個々のプレイにはそれほど重きを置かず、戦略や戦術が試合のゆくえを左右する様を描いていく。選手も主役級が何人かは居るがエピソード毎にスポットライトが当たる選手はどんどん変わって行き、それぞれのポジションにまつわるエピソードが描かれていく。
虚構でスポーツを描くとき、結果に対する理由付けは欠かせない。その説得力においてこの漫画は抜群だ。それにエピソードの描き方もいい。「フットボールは必ずディフェンスから始まる」、この一言を、それもさらりと言うだけなのだけど、そのためだけに4話ぐらいお膳立てをしてみせる。サポーターが胸を熱くする瞬間も肩を落とす瞬間も知り尽くしているからこそ、ぐっと来るシーンを描けるのだろう。
ともあれ非常に面白い。続きが楽しみでならない。