黄昏通信社跡地処分推進室

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タイトル下の文章の元ねたを振り返る(その1):『失われた魂の城』

ひとつ、ピリウィンクスをしてみなさらんかな?
さあ、ボッシュ沼へ出発だ!

日本では創元から出ていた(ゴールデン・)ドラゴン・ファンタジー・シリーズの四作目『失われた魂の城』より。弟とおれがこよなく愛した一冊だった(ねた的な意味で)。中々雰囲気というか緊張感があって面白いのだけど、システム的にはちょっとしんどいところがあった。
まず戦闘システムのしょっぱさが挙げられる。実は、このゲームではさほど戦闘は重要ではない。最善の選択をしていけば殆ど戦闘せずに最後まで進めた筈だ。とはいえ、当時のゲームブックにおいて戦闘は一種の華と言えた。それがこのゲームにおいてはいささかシンプル過ぎる。


サイコロを2個振って、出た目がある数値(相手によって決まっている)以下ならこちらが攻撃を受けて体力ポイントを3点減らす。それより大きければ相手の体力ポイントを3点減らす。
基本的にはこれだけだ。つらいのは相手が多数の場合で、出た目の数字が小さければ小さいほど多くの相手から攻撃を受けたことになる。4人を相手に回したときなど、2が出たら 12 点減らさなければならない。一方でこちらの攻撃は8以上を出してようやく誰か一人に3点、という具合だったので爽快感がないことおびただしかった。
また、全体のフローチャートもあまり上手く出来ていなかったと思う。必要な6個のアイテムを集めながら進むストーリーなのだが、それらはほぼ完全に縦に並んでいて、正しい選択肢を選ぶとあっさり手に入って次のアイテムのパートに進み、誤った選択肢を選ぶと苦労した上に結局手に入らない、というパターンの繰り返しになっていた。だから上手く進むほどあっけなく終わってしまう物足りなさがあった。
どうも終盤のパラグラフは力尽きている感があって、最初の引用文もそんなところに登場する。正直かなりアレだが詳述はしないでおこう。
二番目の引用は道中に出てくるお約束のパズルの場面で出てくる科白。その丘には二種族のゴブリンが住んでいて、片方は本当のことしか言わないしもう片方は嘘しか言わない。丘の上の分かれ道からは、一方の道はあなたの目的地方面ボッシュ沼へ、もう一方の道はこの世の地獄ドラゴンブレス谷へ続いている。たむろしていたふたりのゴブリンに訊いてみると返答は「ボッシュ沼なら、左へ行けばいいさ」。歩き出すあなたの背中に投げかけられるのが引用した言葉で、何故か無性に腹立たしい。
冒頭にも少し書いたが、暗く不穏な世界が結構いい雰囲気を持っていて、頼れるもののない感じがよく描けていた。イラストのタッチも内容とよく合っている。国産ゲームブックには中々ないおどろおどろしさは評価したい。ゲームとしての出来は平凡としか言えない。