黄昏通信社跡地処分推進室

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『わたしいまめまいしたわ』 国立近代美術館,2008

Kに勧められたこともあって行ってみた。東京、大阪、京都の国立美術館の収蔵作品をベースに、5人の学芸員が共同で企画した展示らしい。一応「自分」というか「他者」との関係でゆらぐ「自分」がテーマということになっているのだけど、そういう成立過程もあってかつぎはぎ的な面はあった。
よかったのは澤田知子のセルフポートレイト群と、牛腸茂雄の連作写真。
セルフポートレイトは澤田が髪型・メイク・服装を変えながら 400 枚にわたる証明写真を延々と撮り続けたもので、構図や動きを一切廃した状況で表層だけがひたすら変わり続ける写真が並ぶ。そうなると当然共通する骨子が浮かび上がってきそうなものなのだが、この作品をじっと見ているとだんだんそれがわからなくなってしまう。多分それは表層だと思っているものが内面の判断に大きな影響を及ぼしていることと関係があるんじゃないだろうか。それを形にするためにここまで突き詰めたのだとすれば中々凄いことだと思う。
牛腸の連作写真は今見るとかなりノスタルジーが喚起されてしまってそれが作者の意図したところとはちょっと思えないのだけど、それはさておき中々よかった。基本的に全部同じ構図で、被写体がフレーム中央でカメラの方をじっと見ている。カメラを見ている人はどうしても撮られる自分を意識するものだと思うけど、この作品では気負いや緊張があまり感じられなくて、それが不思議な感じだった。
あとは草間彌生が結構よくてびっくりした。異常にでかい、ヴィヴィッドな色の不規則なジグザグ模様がぶわーっと描かれているだけの絵なんだけど、模様を目で追わされてしまうような妙な力があった。面白いです。
秋山祐徳太子都知事選のポスターが4種類貼られていただけ。実物を見るのは初めてだけどそれでどうということはないし、まあおまけみたいな扱いだった。
3月9日まで。一般 420 円とお手頃で、空いてるので興味ある方はぜひ。