黄昏通信社跡地処分推進室

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『愛おしき隣人』 ロイ・アンダーソン監督,2007

春の恵比寿ガーデンシネマシリーズ第2回(たぶん第3回まであります)。
ある町に住む人々の日常を断片的に少しずつ切り取った映像を積み重ねて一本の映画を構成している。出て来る人は大体なにかしら上手くいってなくて、小さな失敗であるとか、ちょっとした不幸だとか、悪い夢だとかが主に登場する。それはユーモアを交えて描かれていて、見ていると思わずくすっと笑ってしまうようなシーンが多い。
例えば夢に出てくる裁判の場面では、何故か裁判官のところにでかいビールのジョッキが運ばれてきたり、オークションみたいに「電気椅子以上はありませんかな?」とか言ってどん、とハンマーで卓を叩いたりしている。弁護士はその間ずっとぐすぐす泣いているばかりで弁護なんて全然していない。
絨毯屋の場面では、客の応対中に棚から引っ張りだしたラグがどう見ても長さが足りず、客に指摘されて定規を当ててみ(て確かに足りないことに気付い)た店員がいきなり壁にもたれて愚痴り始めてしまう。「このところついてないんだ。今朝は女房と喧嘩しちまった」知らんよそんなこと。
笑ってしまうけど、どのシーンもなんだか切なくて、でも音楽は明るくて、それがとてもよかった。
登場人物ではロックスターに恋してる女の子がとてもキュートだった。夢のシーンもいいのだけど、(おそらく)明け方のシーンがとても綺麗で印象に残った。声がよい。
途中であほみたいに奥行きばかり深い広間で大宴会をやっているシーンがあって、ながーい机に列席者がびっしり座ってて、讃美歌みたいなのを大合唱している。で、最初は普通に歌うんだけど、そのうち何小節かごとに全体の四分の一ぐらい(座席はランダムと見える)が立ち上がって歌い、次の何小節かに入るとまた別の四分の一が立ってさっきの人たちは座り、みたいにしている。そのうちに椅子の上にみんなで立ち始めて、また四分の一ずつテーブルの上から何かを手にとったりする。最終的にはみんなお酒を手に持っていて、歌いながら乾杯、てなる。これがとても素敵だったのだけど、現実にある習慣なのかそのシーンのルールだかがわからなかった。椅子に立ったりしてたので、流石に後者だと思うのだけど、あれはできれば参加してみたい。
なかなか楽しくて満足でした。まだもうしばらくはやってそうなふんいき。