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あふれ出す喫煙者

父の職場のビルが今度全面禁煙になるかも知れない、という話を聞いた。一室だけある喫煙室を完全に潰す計画があるらしい。
その例を引くまでもなく、最近禁煙の建物や施設が増えてきた。個人的には煙草の煙は苦手な方なので歓迎すべき事態ではある。おそらくは健康増進法第 25 条に定める受動喫煙の防止と関係があるのだろう。条文はこんな感じ。


第二節 受動喫煙の防止
第二十五条 学校、体育館、病院、劇場、観覧場、集会場、展示場、百貨店、事務所、官公庁施設、飲食店その他の多数の者が利用する施設を管理する者は、これらを利用する者について、受動喫煙(室内又はこれに準ずる環境において、他人のたばこの煙を吸わされることをいう。)を防止するために必要な措置を講ずるように努めなければならない。
具体的な方法については通知で定めているみたいだけど、要するに全面的に禁煙にするか、さもなければ喫煙場所と非喫煙場所を分けましょう、ということだ。部屋を区切ったり空気浄化装置を設置したり、というコストを考えると、じゃあいっそのこと全面的に禁煙にしちまおう、という判断を下す管理者も少なくないものと思われる。
ところが建物/施設の全部を禁煙にしてしまうと、喫煙者が入口にたまりがちになる。これは出入りする者や、場合によっては前を通るだけの者にも煙を吸わせることになり、あまりいいこととは言えないように思う。建物内に喫煙者が居る以上は、その排出する煙についても責任を取るのが建物管理者のとるべき態度ではないだろうか。もちろん法律にはそこまで書いていないけど。
また、禁煙の場所が増えるのに伴って一部の喫煙可能な場所の煙の濃度が高まっている、という面もある気がする。特に路上が(路上喫煙禁止の自治体を除いて)「最後の喫煙所」になりつつあるのが問題だ。充分な数の公共喫煙所を作る、なんてことが現実的ではない以上、この流れが止まることは当分ないように思われる。
つまり、非喫煙者にしてみれば、健康増進法のおかげで、吸いたくもない副流煙を吸わされる機会がむしろ増えている、という状況になっている。
健康増進法の趣旨を考えれば、自治体は路上喫煙を禁止すべきではないだろうか。むろん二十五条の定義では屋外は基本的には受動喫煙の環境に含まれないことになっている。でも、経験のある人ならわかる通り、ビルの前で喫煙者がたむろして煙草をふかしてる状況や、狭い道を歩いている時に前の人が煙草を吸っている状況、なんてのは思いのほか多くの煙を吸わされるものだ。そして道路というのはまさに「多数の者が利用する施設」であり、その管理者は国ないし自治*1である。
(まあ、「思いのほか多くの煙を吸わされる」と「健康に影響を及ぼす」の間には大きな開きがあるだろうから、この段落はちょっと極端過ぎるかな。)
父に「ビルを全部禁煙にするとみんな外で吸うようになるんじゃないの」と訊いてみたところ、確かにそれはあるんだけどでもそれ以上に喫煙者の何割かが煙草そのものを止めるだろう、という返答だった。煙草は中毒性があるから惰性で吸っている人も多く、きっかけがあると止める人は少なくないらしい。実際喫煙室が3室から1室に減ったときも煙草を止めた人がそれなりに居たのだそうで、今回も止める人は居るはずだというのだ。それは考えてもみなかった。
# ということは路上喫煙を禁止すれば……というのもあるのだが、今回はそれには触れないでおく。
ともあれ、健康増進法(の第 25 条)と現実の状況が少し齟齬をきたしているような印象はあるので、そこら辺もう少しなんとかならんかなあと。

*1:管理者は国ないし自治体:公道であれば。国道なら国だし県道なら県だし以下略。国道の管理は都道府県がやってることが多いっぽい。