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『ホルテンさんのはじめての冒険』 ベント・ハーメル監督,2007

まったくノーマークの映画だったが、両親が観に行くと言っていて面白そうだったので観てみた。
予告編だと「勤勉な運転士ホルテンさん、定年を迎える最後の乗務日に人生初の大遅刻、そこから人生は大きな脱線」みたいな感じで、巻き込まれ型コメディでも展開しそうな感じなのだが全然そんなことはなかった。
確かに遅刻のエピソードから始まってはいるのだけど、それが大きな転機になるわけではなく、なんとなく少したがの外れたホルテンさんが淡々と日常から少しぶれた世界に踏み込んでいく。空港へ知人を捜しに行って滑走路で悠然とパイプをふかして捕まったり、サウナで眠り込んでしまって電気が落とされて真っ暗になって、仕方ないからとりあえず夜中のプールで泳いでみたり。
やたらと夜のシーンが多いのが印象的で、特にジャンプ台のシーンはとても美しかった。夜の雪景色というのはどこか人を厳粛な気持ちにさせるものがあって、それが斜面を見下ろす恰好だと緊張感も入り混じってえも言われぬ心持ちになる。昔照明もない夜中のゲレンデでスキーをかついで斜面を一本登り、上から直滑降で滑り降りたことがあるのだけど、その時のぴんとするような感じが思い起こされるようだった。
あと、冒頭の列車のシーンが素晴らしく、ノルウェーすげえって思う。U字谷みたいなところの底を列車がひたすら走って行くんだけど、そのスケールと白さがはんぱない。
宿屋のおかみさんもよかった。画面に出ている時間は長くないんだけど、笑顔がとても素敵で、キュートかつ美しい人だった。なんか見ただけでちょっと得したみたいな気分になる。
面白い映画でした。