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[おまえはワイドだ] 心に残るゲームたち (18):『オメガファイター』

■『オメガファイター』 UPL,1989/アーケード
『オメガファイター』は UPL が発売した縦スクロールのシューティングゲームだ。8方向レバーと2ボタンという比較的オーソドックスな操作系だが、左ボタンのショットは初めからフルオートの連射になっている。
ショットのパワーアップは「アイアン」と「ワイド」の2系統で、アイアンは自機と同じ幅だが威力が強く、取れば取るほど威力が上がる代わりに弾の届く距離が短くなる。ワイドは幅が広く弾の届く距離も長いが、取れば取るほど幅が広がる代わりに連射力が落ちる。しかし硬い敵が多いゲームなのでワイドは実用的ではなく、基本的にはアイアンを数個取って進むことになった。
右ボタンでは持っているアイテムを使用する。このゲームにはアイテムが「スローモーション」と「オールクラッシュ」の2種類ある。これらはひとつ目を取ると自機の左につき、もうひとつ取ると右につく。持っている時にアイテムそのものに敵弾を受けてしまうと、その弾こそ消せるもののアイテム自体はなくなってしまうのが辛いところ。使う時は確か先入れ先出しで使っていった、ように記憶している(これはかなり曖昧)。
スローモーションは文字通り、自機以外のあらゆるものの動きが極端に遅くなる。緊急回避にも使えるし、稼ぐ際にも不可欠なアイテム。
オールクラッシュはこれまた文字通り、画面上の全ての敵を一発で破壊する。これの凄いところは、ボスも一発で倒せることだ。
このゲームの最大の肝は、敵を近くで倒せば倒すほど得られる得点に高い「倍率」がかかることだ。正確に書くと、縦方向の距離(Y座標の差)が小さいほど倍率が高くなる。画面の半分以上離れていれば1倍にしかならないが、ほとんど真横に近いほどすぐ傍で倒すと最大の 10 倍になる。
倍率はその場の得点だけでなく、各面のクリアボーナスにも影響する。各面の最後に、それぞれのプレイヤーが倒した敵の、倍率ごとの占有率が棒グラフで表示される。もっとも占有率の高い倍率がクリアボーナスにそのまま乗じられる。2人プレイ時はボーナスを得られるのはひとりだけという念入りさだ。もちろん、倍率の高い方にだけボーナスが入る。
その倍率システムの中で、わけても「10 倍」は特別な扱いをされていた。倍率の数字は低い方ほど赤く、高い方に行くほど青い色になるのだけど、10 倍は虹色だった。
10 倍で敵を倒すごとに、画面上部にあるゲージがどんどん右へ向かって伸びていく。このゲージが画面の中央に達するとオールクラッシュが1個出現し、さらに右端まで到達すると残機が増える「1up」アイテムが出現してゲージは左端に戻る。つまり、がんがん 10 倍を取るとゲームを助けるアイテムも出るし残機も増えるよ、というゲームだった。
倍率のルールはオールクラッシュにも適用される。オールクラッシュの場合自機より後ろの敵を倒せるが、それらについては全て倍率が 10 倍になる。ということは、画面最上段にはりついてオールクラッシュを打てば画面上の全部の敵を 10 倍で倒せることになる。このリスクとリターンのバランスが熱かった。実際には単に前に出て行くのは難しく、スローモーションを打ってから前に出ることになるのだが、それでも簡単ではなかった。
また、確か当時の雑誌に載っていたと記憶しているのだが、ショットを一発も撃たずにひとつの面を最初から最後までクリアすると、1000000 点のボーナスが入る。スローモーションやオールクラッシュは打っても構わない。これだけで 1up が2つか3つ出るほどの得点(このゲームでは一定得点を超えるごとに 1up アイテムが出現する仕様だった)なので、並大抵のボーナスではなかった。
これらの仕様を併せて考えるに、どうもこのゲームは2人同時プレイを前提に作られたような気がする。
実際おれはこのゲームをひとりでプレイしたことはなくて、常にとある友人とプレイしていた。そいつの方が圧倒的にゲームは上手かったので、そいつがアイアンでばりばり 10 倍を稼ぎつつがんがん硬い敵を倒し、おれはワイドを3〜4つ取って周囲の雑魚を掃除する、というコンビネーションで進んでいた。アイテムを4つ持てるのが地味ながら非常に大きく、「スローモーション→オールクラッシュ」というのも比較的頻繁に打てた。また、2人同時だと2面ぐらいまでは 1000000 点がわりと簡単に取れる。それで 1up がわんさか出るので、ふたりでそれを分け合って残機を増やすことができた。
システム以外でも、全8面を通じて1隻の巨大宇宙戦艦と戦うという設定や、地上物にあたるその戦艦が8方向にスクロールする面構成は印象に残っている。金属色と赤を基調にしたいささか暑苦しいデザインもゲームの雰囲気にはよく合っていた。CPU は Z80 だったらしいことを考えると、グラフィックも相当頑張っていたと思う。
野心的で、斬新で、面白かったけど、でもこのゲームは売れなかった(らしい)。
多分、少し難し過ぎたのだと思う。全8面2周らしいが、結構やりこんだのに確か1周もできなかったと記憶している。もちろんおれが下手だったからというのもあるのだが、相手の友人は本当にゲームが上手かった。奴がクリアできなかったのだから、やっぱり相当難しかったのだろう。あまり広く出回ることも無く、オメガファイターは静かにゲーセンから姿を消して行った。
最後にひとつ。
面クリア時の倍率勝負では、ワイド担当のおれには殆ど勝ち目はなかった。特に2面まではショットを撃たずに進んでいたから、ゲージすら表示されないこともしばしば……だったのだけど、その2面でだけは勝てることがあった。2面の冒頭で自機が一気に加速するシーンがあって、その時に自機後部の噴射口から炎が長く伸びる演出がある。その炎に雑魚敵を引っかけると倒すことができるのだ。そうすると、自機より後ろだから倍率は 10 倍になる。あとはショットを撃たなければ、占有率が一番高いのは 10 倍になるというわけ。最初炎で敵を倒せることに気付いてなくて、時々1面や2面で弾も撃ってないのに 10 倍のゲージが出るなあ、と不思議に思っていたから、真相に気付いたときはちょっと嬉しかったのを今でも憶えている。

メモ

  • wikipedia を見ていたら「危険行為推奨シューティングの元祖」みたいな記述があった。危険行為推奨シューティングって言葉をそもそも知らなかった。なんか聞き憶えがある言い回しだと思ったら「残虐行為手当」にちょっと似てるよな。
  • オールクラッシュについて、確か 2P 側が打っても倍率が 1P 側の自機の位置で決まった、という漠然とした記憶があるのだけど、何かと勘違いしているかも知れない。情報求む。
  • アイテムが先入れ先出しだったか先入れ後出しだったかはたまたどっちでもなかったのかどうしても思い出せない。これも情報求む。

リンク

その他

このゲームのデザイナーはどうやら「MTJ」こと三辻富貴朗氏だったらしい。はっきりしたソースはないが、いくつか断片的な情報を合わせると多分間違いないところ。ちょっと先になってしまうかもしれないが、MTJ 氏についても少し書いておきたいと思っている。
前回最近重くなっててアレだなみたいなこと書いたけど1回で逆戻り。やはり思いがこもるとがっつり書かずにはいられない。

過去に載せた分は以下の通り。上に行くほど新しいエントリです。
[かみさまおねがい]:『高田馬場アドベンチャー』(1983?)
[力を合わせて]:『ゲイングランド』(1988)
[麻雀に似たなにか]:『スーパーリアル麻雀P4』(1992)
(番外編):『ツインビー』(1985)
[幻のライバル]:『キャメルトライ』(1989)
[Ready Go!]:『プラスアルファ』(1989)
[終わりなきゲーム]:『ギガンテス』(1990)
[追っかけっこ]:『ポリス&ギャング』(1983)
[今度は縦スクロール]:『イメージファイト』(1988)
これより古いバックナンバーはこちら→[心に残るゲームたち]