黄昏通信社跡地処分推進室

黄昏通信社の跡地処分を推進しています

[銃と弾丸]心に残るゲームたち (24):『ガンバレット』

■『ガンバレット』 ナムコ/アーケード,1994
今回は前回の『タントアール』からミニゲームつながりで『ガンバレット』をとりあげよう。
ガンバレットは 1994 年に発売されたガンシューティングで、とてもユニークなゲームだった。もっとも、きょう体はいたってオーソドックスなアップライト型で、本体とチューブでつながれた二丁の光線銃でふたり同時プレイができるというのも当時としてはまったく珍しくもない。面白かったのはその構成だ。
当時のガンシューティングは圧倒的にレールスクロールのものが多く、ガワこそ色々だったものの、おれには全部おんなじゲームに見えた。どうしてわざわざ敵のアジトにひとりで乗り込んでいって、圧倒的に多数を相手に回してカニ歩きしながら頑張らなきゃいけないんだ? まあ、現実的にはプレイ料金が高かったからという理由の方が大きいのだけど、いまひとつガンシューティングというジャンルは魅力的には思えなかった。
ガンバレット』は、全然違った。ミニゲームの詰め合わせという、はじめからストーリーを持たせることを放棄した形態をとるかわりに、銃型のコントローラーでできそうなことは何でも詰め込んでみせた。コミカルなグラフィックと気持ちのいい効果音、そして救うべき人物が全部オヤジという不思議な設定。
見るからにこのゲームは違う、面白そうだ、と思っていたのだけど、実際におれがプレイしたのは発売されて数年経ってからだった。この点に関しては本当に後悔しているし申し訳ないとすら思う。やってみると果たして、いや期待以上に面白かった。
たとえば、酒場の壁の棚にずらりと並んだ酒瓶を時間の限り割り続ける。
たとえば、枝からはらりはらりと地面へ落ちていく一枚の葉っぱを、一発の弾丸で射抜く。
たとえば、16 枚並んだ数字のパネルを、小さい順にひとつも漏らさず全部撃つ。
たとえば……、
連射、狙撃、判断力、動体視力。とにかく、光線銃を使って試せるものはなんでも試してやろうと言わんばかりに、様々な種類のミニゲームが入っていた。その数実に 48 種類。もちろん、似たようなミニゲームも結構あったけど、少なくとも目先は変わったし、ものによって方向性を微妙に変えてあるので、同じ系統でも得意なものと不得意なものがあったりした。
難度調整も絶妙だった。「練習」「初級」「上級」「激ムズ」とコースが分かれているのだけど、同じミニゲームでもコースに応じてノルマや制限時間などが違っていて、この設定がいちいちよくできていた。初級はものによっては初見でもどうにかなる程度で、上級になるとさすがに慣れが必須、激ムズになると苦手なものはだいたいクリアできない、という感じ。
ゲームの展開は奇しくもタントアールにちょっとだけ似ていて、画面上にランダムで表示される4つのミニゲームからひとつを選んでプレイしていく。ひとつのミニゲームが1ステージとなる。タントアールと異なるのはひとつをクリアしても補充されないことで、つまり順番は選べるけど出てきたミニゲームは全部クリアしなくちゃいけない。4つクリアするとまた4つ出てくる。これを4回繰り返し、計 16 ステージをクリアするとラストステージがあり、クリアとなる。
スタート時にはライフが3つあって、ミニゲームでノルマクリアに失敗するとライフがひとつ減る。それとは別に、撃ってはいけないもの(爆弾とか、もう一方のプレイヤーの色の的とか)を撃ってしまった場合にもライフはひとつ減る。ライフが0になるとゲームオーバーだ。ライフが増えるチャンスは1ゲーム中1回で、ステージ8をクリアした後に差し挟まれるボーナスステージでひとつだけ増える可能性がある。ただこれは完全に運で、さいころを振って半か丁か、というようなものだった。
初級と上級コースでは、この4つずつ出てくるミニゲームの中にひとつ「激ムズ」が混じっている。得意なものを引ければいいが、大抵そうそう上手く行かない。後回しにはできるけど、いずれは挑まなくちゃならない。
初級の場合は最初の4つには激ムズが入っていないので、最後まで進むと全部で3つ激ムズになる。上級の場合は4つだ。だから、激ムズ以外ではミスしないとしても、どこかで激ムズをひとつ以上はクリアしなければ最後までたどり着けない。このシステムが展開にメリハリを与えていた。
ミニゲームのハイスコアがずっと残るのも面白かった。それぞれのミニゲームについて、電源を切ってもハイスコアが残り続ける。おれがこのゲームを始めた頃にはどのミニゲームもえらいことになっていて、とうとうハイスコアを出した時の画面を見ることができなかったのだが、それでも得意なものだとそれなりには迫ることができたりもしたし、「この台で遊んだ中で一番上手かった奴」と勝負するという感覚は面白かった。
16 ステージをクリアすると、ラストステージとなる。ここにはノルマはなく、ただ制限時間と的があるだけ。何点とってもクリアーにはなる。お城の外側に設置された 21 個の的を、5秒でいくつ撃てるか。5秒だと 21 発撃つだけでほぼ精一杯で、狙っている暇もない。まして撃ち損じても戻る時間などない。あっというまに時間切れになると、カメラはぐっと引いて城の遠景、仕掛け花火が輝き出す。そして、的を撃ち抜いた数だけ打ち上げ花火が上がるのだ。このステージのハイスコアは大抵の店で3万点台だった。21 発全て当てない限り3万には乗らない。おれは最高でも 19 発が限界だった。やりこんでいた人には笑われるような成績だが、それでも1コインで上級はクリアできたから、個人的にはまあよくやった方だと思っている。
このゲームは妻とよく遊んだ。当時既に稼働開始から 10 年近く経っていたと思うが、新宿三丁目の「JOYLAND」というゲームセンターに置いてあって、近くに行くと立ち寄って1〜2ゲームやる、という感じだった。残念ながらゲームセンターごとなくなってしまって、それ以降は殆ど遊んでいないのだが、ふたりだとひとりとはまた違った楽しさがあって、そこもよくできていたなあと思う。今でも時々思い出すと、ガンバレットやりたいねえ、なんて話したりすることもあるほどだ。

メモ

  • 最初の方に書いたガンシューティングに対する意見はわりと一方的なもので、妥当かどうかはいささか怪しい。ただ、喰わず嫌いの人の中には似たような印象を抱いていた人も少なくないのではないかと思う。
  • 銃型コントローラーがよくできていた。疑似ブローバック機構が組み込まれていたんだけど、スライドレールをソレノイドで動かす方式で、そこそこに撃ってる感じがしたしそれでいて耐久性も高かった。某テーマパークの某恐竜退治ガンシューティングでは、銃の反動を表現するのにシリンダとエアコンプレッサを使っていて、反動は確かにがっつり来るんだけどしょっちゅう銃のガワが割れたりシリンダを固定してるブラケットが折れたりして大変だった……なんてことがあったので、10 年近く稼働してても(まあ途中多少の修理はしてるんだろうにしろ)しっかり動いてるこの銃は中々凄いよなあと思う次第。
  • 本文に入れられなかったが、続編も出ている。アーケードでは 1999 年に『ガンバァール』、2000 年に『ガンバリィーナ』が発売された。前者はそこそこに客もついていたようだが、後者は速攻で姿を消していたような記憶がある……というか全くやった憶えがない。