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[スパイアンドスパイアンドスパイ]心に残るゲームたち (25):『シークレットエージェント』

■『シークレットエージェント』 BNN/カードゲーム,1990?
これまでお題にしたゲームは殆どがアーケードか PC-6001 のゲームで、ジャンルもアクションかシューティングばかりだが、「おれの心に残るゲーム」という以外に特にしばりは設けていない。つまりおれの好みが偏っているというだけの話だ。
ただ、例えば RPG については、これからもあまり書かなさそうな気はする。ストーリーやキャラクターについては大抵よく憶えていないし、システムについては語れるほど俯瞰的な知識がない。だから何を書いたらいいのかよくわからない。あるいは将来書くかも知れないな、という作品も無くはないが、いずれにしても多くはないだろう。
今回は初めて非電源系ゲームをとりあげてみる。これもあまり書かなさそうなカテゴリなのだけど(単純にプレイしたゲームの数が少ない)、先日ふとしたきっかけでこのゲームのことを思いだした。多分このタイミングで書かないともう脳から出て来ないような気がするので、とにかく形にしておこうと思う次第だ。
『シークレットエージェント』は 1990 年に BNN から発売された。1988 年の『モンスターメーカー』のヒット以来、国産カードゲームはちょっとしたバブルの様相を呈していて、複数のメーカーから多くのタイトルが発売されていた。BNN はおれの知っている限りでは『SUPER 大戦略』とこのシークレットエージェントをリリースしている。大戦略の方は仲間うち、というより学年レベルで記録的な流行になったゲームだったのだが、そのデザイナーである黒田幸弘が手がけた作品ということで、このゲームにも発売当初から注目していた憶えがある。
プレイ人数は3〜6人。各プレイヤーは国家元首になって、自国の産業を発展させることがゲームの目的だ。が、もちろんこの題名がついているぐらいであるから、ゲームの主眼はむしろスパイを使ってお互いの足を引っ張り合うことに置かれている。
まず各プレイヤーに「国家元首カード」を裏向きに配るところからゲームは始まる。国家元首カードは6種類あって、裏面は他のカードと同じになっている。元首にはそれぞれ特殊能力があって、用いる際には表にしなければいけないが、それまでは他のプレイヤーに見せる必要はない。
各プレイヤーは元首を含めた手札7枚でゲームを進める。山札から1枚引いて、手札を用いた行動を行う、あるいはパスする。自分の手番の終了時に手札が8枚以上ある場合は7枚まで減らさなければならない。
直接的には「技術カード」を自分の前の場に出すことで産業は発展していく。技術は原子力、重工業など5つの分野に分かれていて、分野ごとに数字が見えるように重ねて置かなければならない。カードにはそれぞれ0〜5点の点数が書かれている。終了時に場に出した技術カードの点数の合計が一番高いプレイヤーが勝ちとなる。
点数を稼げるカードはもう一種類「亡命者カード」がある。これも分野が分かれていて、場に出すことによって得点になるのは技術カードと同じで、こちらの点数は3〜5点と総じて高いのだが、山札が無くなってからでないと場に出せない、という違いがある。
相手が場に出している技術カードを攻撃するのが「オープンアクション」で、これは「災害カード」を使うことで行える。オープンアクションの目標にできるのは、場に出ている技術カードの、それぞれの分野の一番上のカードだけ。各技術に対応した災害が設定されていて、例えば原子力の技術カードに対しては《メルトダウン》で攻撃できる。災害カードには成功値が書かれていて、サイコロふたつを振ってその数値以下を出せば成功となる。オープンアクションを行う側は手札の「スパイカード」を一緒に出すことで成功値にそのスパイの能力値を加えることができる。同様に行われる側も手札のスパイを出すことができて、成功値から出したスパイの能力値を引くことができる。
相手の手札を攻撃するのが「シークレットアクション」。こちらはスパイカードを使うことで行える。好きな枚数のスパイカードを用いてよく、成功値はスパイの能力値の合計となる。やはり目標となる側も手札からスパイを出すことができて、成功値からスパイの能力値を差し引ける。シークレットアクションを行ったプレイヤーは、目標のプレイヤーの手札から無作為に一枚を選んで公開する。そしてサイコロを2つ振り、成功値以下を出せば成功となる。失敗した場合はなにも起きず、公開されたカードは手札に戻る。
成功の場合、選んだカードによって処理は異なる。選ばれたカードが国家元首であった場合は暗殺成功となり、暗殺されたプレイヤーは場に出している技術カードを3枚捨て札にしなければならない。技術カードを選んだ場合は捨て札にさせる(……んだったと記憶しているがあやふや)。亡命者カードの場合はシークレットアクションを行ったプレイヤーの手札に移る。「契約書カード」「リソースカード」の場合については忘れてしまったが、捨て札にさせるか盗んでこれるかだったような気がする。
スパイカードを選んだ場合は、サイコロの目にかかわらず、成功値以下の能力値を持つスパイなら捨て札にさせて、それより大きな能力値のスパイだったら手札に残る(これもあやふや。サイコロ振り合ったような記憶もある)。「スーパースパイカード」を選んだ場合は、サイコロの目にかかわらずなにも起きず、公開されたカードは手札に戻る。
スーパースパイカードはこのゲームの花形だ。《J.B.》《G.13》《Lupin III》《RAMBO!》の4枚で、それぞれにできるアクションや得意分野が異なるが、いずれも名無しスパイとは格の違う能力を誇る。例えばランボーはオープンアクションしかできないが、どの技術カードでも攻撃することができる。ルパンIII はシークレットアクションでもオープンアクションでも盗みができるが、元首を引き当てても暗殺はできない……といった具合だ。ひとり以外まったくスパイじゃない気もするが、まあ気にするな。スーパースパイはスパイを超越した存在であってスパイではないのだ。多分。
そしてスーパースパイは、一仕事終わっても簡単に退場したりはしない。アクション終了後ただちに競りが開始される。プレイヤーは時計回りに「契約書カード」を出すかパスするかを選択していく。契約書には #1〜#5 があって、数字が小さいほど強い契約書になる。全員がパスするまで競りは続き、その時点で一番小さい数字の契約書を出したプレイヤーがスーパースパイを手札に入れる。
リソースカード(仮名)については正直あまりよく憶えていないのだが、《再編成》《ペレストロイカ》の二種類のカードがあったことはほぼ確実で、それ以外に災害カードを防ぐカードがあったようなぼんやりした記憶があるがこちらはかなり曖昧だ。
ともあれ各種のカードを使って技術を発展させたり相手を妨害したりしながらゲームは進んでいくのだが、当然そのうち山札が無くなる。もうそれ以上カードを引くことはできないが、ゲームはそこで終わらない。むしろここからが本番と言ってもいいぐらい、このゲームの終盤は熱い。
プレイヤーは手元にある手札だけでゲームを進めていく。基本的にそれまでとルールは同じだが、違う点が3つある。ひとつはパスができないこと。ふたつめは亡命者カードを場に出せるようになること。最後のひとつは、自分の手番になったら「終了」を宣言できること。終了を宣言したプレイヤーは、以後ゲームに参加できないが、各アクションの対象になることもなくなる。つまり、その時点で場に出している点数が最終的な得点として確定する。
亡命者の得点は概して高いので、できるだけたくさん出しておきたい。しかし山札が無くなってからはターンを重ねれば重ねるほど手札は減り、シークレットアクションをされた際に元首を引かれる可能性が高くなっていく。暗殺された時に失う技術カードは3枚だ。一度ならぎりぎり踏ん張れても、二度暗殺されれば大抵は勝負の圏外に落ちる。そしてスーパースパイが相対的に恐ろしい強さになる。場に出ているカードの数値が高くなるため、普段は地味なルパンIIIやランボーも充分以上に強い。
ぎりぎりまで亡命者を出すか、早目に終了するか。抱えたスパイは、誰を相手に、どのタイミングで使うか。まだ残ってるスーパースパイはどれで、契約書は何枚残っているのか。状況は加速度的に複雑になり、情報は殆ど公開される。駆け引き、運、展開の綾、あらゆることが勝負を左右する。手札と神経を擦り減らす数ターンが過ぎ、最後のプレイヤーが終了を宣言するとゲームは終了する。
濃密なゲームだったが、昼休みで充分終わった憶えがあるので、1ゲームあたりのプレイ時間は1時間に満たないと思う。一時期は本当にかなりやりこんだ。この文章にも「あやふや」「うろ憶え」という言葉が頻発しているように、おれはこのゲームを持っていないし、過去に所持したことすらない。それでもこれだけ憶えているのだから、記憶が美化されているわけじゃなくて本当に面白かったのだろう。今後プレイできる可能性は非常に低いだろうが、それでも機会があれば、いつかまた遊んでみたいと思うゲームのひとつだ。

国家元首一覧

議長
《不況》(全員手札を5枚に減らす)と《恐慌》(全員手札を4枚に減らす)の影響を無視できる、結構派手なカード。その代わり確か手札を4枚以下にしないと終了宣言ができない。それをいつでも終了できるようにするのが《ペレストロイカ》だったと思うのだが、憶えていない。
大統領
手札が1枚増える。すげえ地味な能力。ただ《不況》や《恐慌》の時には有難いし、山札が無くなってからも確実に有利で、それほど弱い元首でもない。でも、引いて嬉しいもんじゃなかったなー。
皇帝
契約書 #0 として一度だけ使える。たった1回だが、一番いいタイミングで一番欲しいスーパースパイを競り落とせるので思ったよりは強い。しかもスーパースパイを使うのは楽しいので、引くと嬉しい元首。
宗教上の最高指導者
ゲーム中3回まで、自分に関わるサイコロを振り直す/振り直させることができる。つまりこの元首に対する成功値の低いアクションはほぼ成功しない。実際に使うよりもその抑止力の方が重要だったりもするが、意外と侮れない能力。ちなみにあだ名は「ショーコー」だった。イラストがそのままだったからだ。この頃はまだそんな風にねたにすることができた。
大佐
サイコロの目を1修正できる。自分が振る方も、相手が自分に対するアクションで振るサイコロも修正できて、一見強そうだが役に立つ場面は1ゲームに1回あるかないか。しかも能動的に使える能力でもない。たぶん一番弱い元首。
首相
暗殺されても2枚しか失わないで済む、というとんでもない特性をもっている上に、「再編成」を宣言すると、場に出している技術カードの上下を入れ替えられる(《再編成》カードと同じ効果)。どちらの能力も強く、間違いなく一番強い国家元首。どう考えても強過ぎたんだけど、流石に集中的に狙われることにもなるので、まあわざとなんだろう。そんなわけで、ばれていないうちは再編成は使いづらかった。

スーパースパイ一覧

J.B.
シークレットアクションとオープンアクションが両方行える、最も優秀なスーパースパイ……だったと記憶しているのだがオープンアクションってなにできたっけ? シークレットアクションでは暗殺は成功、亡命者は連れ帰って来れる、とおいしいことだらけ。
G.13
シークレットアクションしかできない上に、亡命者でも構わずぶっ殺しちゃう大雑把さが売り。相手の得点を下げさせることしかできないため、使いどころが難しい。
Lupin III
シークレットアクションとオープンアクションが両方行える。シークレットアクションでは相手の技術カードや亡命者カードを盗めるのだけど、暗殺ができないのがつらい。オープンアクションでは唯一相手が場に出している技術カードを盗むことができて、これはかなり強かった。
RAMBO!
オープンアクションしかできないが、確実に成功するうえ、下の方に埋まっている技術カードでも標的にすることができる。引いてもそれほど嬉しくないが、使われるとかなりいやなカード。