黄昏通信社跡地処分推進室

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『ふたつのスピカ』(16) 柳沼行 メディアファクトリー/フラッパーコミックス,2009 ISBN:9784840129237

これにて完結。一冊ぶんほとんどエピローグといっていいような話で、長きに渡った連載をしっかり着地させた。余韻の残る素晴らしい終わり方で、商業誌連載においてこれだけ見事に完結したこと自体が稀有だろうし、そのことには本当におめでとうと言いたい。
夢がひとつの区切りを迎えても人生は続く。それぞれのこれから歩む道、そして5人が去ったあとの夢の舞台が丁寧に描かれる。それぞれに大きな成長をとげたアスミたちの姿には流石にちょっとぐっと来た。これからもどうか幸せに、と願いたくなってしまうような。
設定や展開には瑕疵や無理も多く、手放しで全部褒められるような作品ではなかったけど、てらいのないひたむきさと、どこか突き放したようなシビアさがいいバランスで融合していて、それが読ませる力になっていたのだと思う。後半失速しかけた物語がなんとか着地することができたのも、それまでに充分な高度と速度に到達していたからだし、作者が最後まで全力でハンドリングしたからでもあろう。
お疲れさまでした。どこかでまた次回作を読めれば、と願っている。