ブルーコンコルドが引退して乗馬になる、というニュースを見たとき最初に感じたのは、そうか、種牡馬になれなかったのか、という程度の感想だった。そこまで意外ではなかった。長年競馬を見てきて諦めが染みついているからかも知れないし、ブルーコンコルドにそこまでの思い入れがないからかも知れない。というかまあ、競馬自体このところ殆ど見ていないのだから、これ以上の感想を抱きようがない気もする。
ところが、何日かのうちに、このニュースについて、実に多くの人がネットで意見を述べていた。これはちょっと面白いな、と思った。述べられている意見も様々だった。いくつかのレイヤに属する問題点がちょうどブルーコンコルドの上で結節していて、みんな自分が気になったことについてひとつずつ語っている、みたいな印象を受けた。
折角だからメモ。
- 「G1 を7勝しているのに種牡馬入りできないなんておかしい」というのは確かにそうだが、現実に7つも勝ってるのに種牡馬入りできないんだったら、それは実質的には G1 ではない。おかしいのは格付けの方で、格付けこそが実質に見合っていない。
- ダート路線の整備が、かつての競走体系では評価され得なかったであろう馬の評価を高めることになった一方で、種牡馬の需要を広げることにはならなかった。そのため、ダート馬については、競走馬としての成功と、種牡馬としての評価が、より乖離することになった……ってことでいいのかな。これ殿下の書いてたまんまだけど。上記した「実態に合わない格付け」はその乖離をより大きなものにしている。
- とはいうものの、そもそも競走馬としての成功と種牡馬としての評価って、基本的に一致するものではないのだよな。東京優駿勝った馬だって、超一流の扱いで種牡馬入りすることってそんなに多くない気がする。
- あと、一頭の馬の持つ興行性と種牡馬としての評価ってのも一致しない。ある程度競走実績を残した馬がキャリアをそれ以上重ねることは、たいていの場合種牡馬としての価値を下げることにしかならない。これは競馬にとって結構不幸なことなんだけど、底を見せてない馬にこそ魅力を感じてしまう心性はそれこそ多くのファンにも在るのではないかな。
- だから、長く走ってファンに愛された馬が種牡馬として高い評価を得られないってのは、結構根本的なもんでもあると思う。芝とダートの優劣とか、G1 という格付けとか、そういった日本競馬の構造的な問題を超えたところにあるようにも。
- ちなみに、おれが競馬見始めた 1992 年頃は種牡馬って 500 頭以上はいた筈で、繁殖牝馬は 15000 頭、生産頭数が 11000 頭とかだったと思う(ソースは競馬ブックに載ってたほんまゆみ氏のコラム(のおぼろげな記憶))。今はそれぞれ 270 頭、10200 頭、7500 頭(こちらのソースは MARIUS 氏の変態資料で、データは 2007 年とのこと)。路線の整備なんて呑み込んで余りあるほどの縮退ぶり。