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高専ロボコン 2009 全国大会

思ったよりローリングジャンプやってるところが多くて驚いたんだけど、「決めれば勝ち」に近い技なので実装する価値があると考えた高専が多かったようだ。あと、地方大会を勝ち上がるだけならローリングはやらなくていい、と割り切っていたチームもあったのかも知れない。
試合として一番ぐっと来たのは準決勝の第2試合で、北九州高専が操縦者のミスで出遅れてしまい、それを尻目に香川高専詫間キャンパス)が着実に得点を重ねて 60-20 とリードした場面。北九州高専は残り 30 秒を切ってから最後の大技ローリングジャンプ+スターステージで 40 点獲得を狙いにいく。踏み切り位置を慎重に定め、残り 15 秒でジャンプ! ……だが、わずかに近過ぎたため、着地に失敗してしまう。フィールドに居たチームメンバーは諦めて一瞬動きが止まる。応援席から部員の声が飛ぶ。「もういっかい! もういっかい!!」 そうだ、まだ終わりじゃない。メンバーはリトライを宣告し、マシンを元の位置に戻し、位置を決め直す。そこでタイムアップ。その直後にマシンはジャンプする。今度は綺麗に一回転し、ステージ上に着地する。あと2秒早ければ、同点になっていたのだ。一瞬メンバーが止まった時間。ぜったいに諦めちゃいけなかった。勝負が決まる最後の瞬間まで。
あと、香川高専が決勝で 100 点取ったのはまじで超すげえと思いました。広島商高専、ほんと頑張ったと思うんだけど、今年の課題で 100 点取れたんならそこがロボコン大賞でいいんじゃねーのかなー。
追記:
下でコメントをもらったこともあって補足しておく。今年の課題は分量が多く、すべてを時間内にこなすことは非常に困難だった。というか、ほぼ不可能だとおれは考えていた。だから、数ある課題のうちどれを選んでどれを捨てるかが重要になる、ということを前回書いた。この課題に対してほぼ完璧なソリューション*1 を提示したのが準優勝の呉工業高専で、ここは「3分間で確実に 50 ポイント取れるマシン」を目指し、それを可能な限りシンプルな機構で実現した。スタジオでのコメントでも「やろうと思っていたことが全部できたので悔いはない」(大意)とコメントしていたが、強がりではなく本心だろう。見定めた 50 ポイントという数値、そこにたどり着く方法、まさにソリューションと呼ぶべき存在で、番組での扱いは大きくなかったけど非常にレベルが高い。素晴らしいロボットだった。
ところが香川高専は「アンサー」*2 を追求した。100 点満点の課題に対して、100 点を取るマシンを作りにいったのだ。全国でも屈指の強豪が、勝つための最良の方法がどのようなものかを考えなかった筈はない。考えたうえで、それとは違う、重量制限いっぱいいっぱいの、全部ができるロボットを作って大会に持ち込んできた。その志の高さ。そして本当にその全部を、しかも決勝戦で実現してしまった。50 点に辿り着いた時点で、あとはプレゼントを台に乗せずともリフトだけ決めれば勝ちだったのに、相手のプレゼントを落とすリスクを冒してまで自分のプレゼントを置きに行って成功し、リフトを決めて、最後にローリングジャンプに挑戦した。練習ですら一度も成功したことが無いというジャンプの着地が決まったのは、ロボコンの神様が「挑戦する者」に与えてくれたプレゼントみたいなものだったのかも知れない。いずれにせよ、100 ポイントというスコアそのものが、まさにロボコン大賞に値するパフォーマンスであったと思う。
広島商高専のたったふたりの挑戦、そして準決勝進出という成績は驚異的だし、それを貶める心算は全くない。ただそれでも、「ロボットコンテスト」において大賞に値するロボットであったかというと疑問が残る。Iがコメントで書いている通り、特別賞的なものを授賞するのがよかった気がする。
ところで、ルール調べてて気づいたんだけど、全国大会の3週間ぐらい前に、準決勝と決勝は試合時間が4分になるってルールが制定されていた。これは呉工業高専にはかなり気の毒だったと思う。その伸びる1分は完全に相手にしか利しないからだ。逆に香川高専詫間キャンパス)には有利に働いただろう。3分では 100 ポイントは無理だったはずだ。その辺りは勝負のあやというほかないが、ちょっともやもやしたものは残らないでもない。

追記長えー。

*1:ソリューション:与えられた条件の中で勝つために最適な手段のこと。例えば今年の課題では 100 点が最高の得点となるが、殆どの試合では 60 点あれば負けることはなく、70 点あればまず勝てる。とすれば、「確実に 70 点取れるマシン」が一番強いことになる。みたいな話。以前も書いているのでそちらも参照→高専ロボコン2008 -- 北海道地区大会

*2:アンサー:上記の「ソリューション」に対応する用語。課題に対する最良の解答を指す。ロボコンでは一般的にはアンサーが(少なくとも一意には)存在しない課題が出されることが多いが、高専ロボコン 2004 では豊田高専が完璧なアンサーに辿り着いていた。