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活動家

我が家の育児のバイブルは松田道雄『育児の百科』なのだが、先日妻が見つけた記述が面白かったので紹介しておこう。

活動家の赤ちゃんは、午前には眠らなくなる。始終うごいていて、少しもじっとしない赤ちゃんのほうが、かえって眠る時間は少ない。活動家というのは、少し眠れば疲労が回復する人間なのだろう。ひるねも少なく、夜もなかなか眠くならない。

活動家である赤ちゃんは、朝おきたときからねつくまで、少しの間もじっとしていない。目がさめれば、ベッドの柵につかまってガタガタやっているし、床の上へおろせば、すぐにはいだして、そばにあるものをつかみにいく。食事のときも、食卓椅子にゆっくりすわっていない、すこし満腹すると、ぬけだしてあそびたがる。お風呂にいれても、じっとつかっていない。石けんやスポンジであそぶ。お風呂からでると、こんどは服を着せられるのをいやがる。はだかの解放感のなかであそびたいのである。

全部とは言わないけど、かなり息子に当てはまる。それだけ普遍的なことではあるのだろうけど、思わずにやりとしてしまうほどよく活写されている。
『育児の百科』は、この観察力と豊富な経験が底にあるということが文章のそこかしこから伝わってくるから、読者は安心することができるのだと思う。もちろん独特の松田節とでもいうべき断言調の文章自体に力があることも確かではあろうが。
そして、その語りかけの多くは寛容で、時には厳しいが、常に孤独と不安にさいなまれがちな新米親へ向けての暖かさがこもっている。40 年以上も刷られ続けているのもよくわかる。