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『るきさん』 高野文子 ちくま文庫,1996 ISBN:9784480032119

今さらという感じながら読了。読んでいて気持ちのいい作品だった。「Hanako」にフルカラー毎回2ページ 16 コマ構成で連載されていた漫画で、ちょうどバブルの末期にあたる時期に描かれている。毎回ささやかなエピソードでるきさんのひたすらマイペースな暮らしぶりを描いていく、まあそれだけの漫画なのだけど、友人のえっちゃんの凡庸さがるきさんに対する重しとして機能していて、そこがよい。あと、妻に言われてあらためて気付いたのだが、絵がめちゃめちゃ上手い。これ今さら言うのほんとに失礼なのかも知れないけど。さりげなく難しい構図とかばんばん使ってるし、人間を体格レベルで正確に描き分けることができている。それでいて技巧を凝らした気配を感じさせないすっとした線で、それがるきさんのキャラクターととても相性がいい。読んでいて気持ちがよかったのは、おそらくその辺にも理由があるんだと思う。

人間を体格まで描き分けるのは結構難しいと思うですよ。それがよくできてる漫画家でぱっと思いつくのはあずまきよひこなんだけど、あの人の絵はがっちり作りこまれてる感じはするよね。高野文子ももしかするとすげえ時間かけて描いてるのかも知れないが、勝手な妄想ながら多分描くの速そう。