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[手はグーで飛んでくる]心に残るゲームたち (32-1):『魔法使いウィズ』

■『魔法使いウィズ』 ソニーMSX,1986
このゲームの原作はアーケードの『WIZ』というゲームだ。おれは原作の方を兄から聞いて初めて知って、とても面白そうなゲームだと思っていた。兄はゲームでも小説でも映画でも、創作物の面白さを伝えることに非常に長けた人で、当時小学生のおれにまだ見ぬゲームセンターのゲームのことをよく語ってくれていた。ゲームセンターには面白いゲームがたくさんあるんだという認識は、ある程度兄によって形作られたとすら言っていいかも知れない。(責任転嫁)
中でも印象に残っているのが、『ASO』『バーニンラバー』とこの『WIZ』だった。前二者はファミコンに移植されているがいずれも遊んだことはなく、この時点ではゲーセンでもプレイしたことがなかった。
『WIZ』は、『魔法使いウィズ』というタイトルで、MSX に移植された。我が家には MSX はなかったが、おれはこのゲームで遊びたくてしょうがなかった。で、多分あまり深く考えずに、ソフトだけ買った。我ながら恐ろしい蛮行だが、後年別のゲームで同じことをやらかしているのでそういう性分なのかも知れない。
しかし、当たり前だが本体抜きでソフトだけ持っていてもそうそう遊べるものでもない。ジプシーのごとくデパートやら友達の家やらで遊んでいたものの、プレイ時間は多分精々 10 時間台にとどまったと思う。しまいには某友人宅に置きっぱなしになったと思われるがその記憶も正直定かではない。(私信:当時江古田にいた某友人様、万万が一読んでたら連絡ください)
ゲーム自体は比較的オーソドックスな横スクロールのアクションゲームだった。カーソルキーの左右で左右移動、上でジャンプ、下で魔法選択、そしてスペースバーで魔法を使う。正直このキーアサインはあまりよくなくて、とっさに魔法を選ぶのはかなり慣れが必要だった憶えがある。ジャンプを上に割り振るまでは仕方ないとして、魔法の選択はシフトキーあたりにできなかったものだろうか。
ステージは基本的に上下二段の床で構成されていて、主人公も敵も上下の床をジャンプで通り抜けられる。のだが、上述のキーアサインのため、確か主人公は下から上には上がれたが上から下へは床の切れ目でしか降りられなかったと思う。
主人公は8種類の魔法が使える。一番基本的な魔法は杖から発射される魔法弾で、これは回数制限がないかわりに、威力が低く射程が短い。とはいえ基本的にはこれをメインに戦うしかない。他の魔法は、それぞれ宝箱から出現したものを「取る」ことで初めて使えるようになり、しかも取った回数分しか使えない。

カッター
前方に刃物状の魔法を発射する。敵を貫通して飛び威力も高いが、ボタンを押してから発動するまでに若干のラグがあって結構使いづらい。
タイムストッパー
一定時間敵の動きが止まる。道中ではほとんど役に立たない。
クイック
一定時間主人公の移動速度が上がる。なぜか(というかプログラム的な手抜きであろうと思われるが)水平方向だけではなくジャンプの上昇/落下速度も上がってしまうので、操作性が極めて悪い。ひどい魔法。
ボンバー
画面上のすべての敵にダメージを与える。威力もかなりあって、カッターとは比べものにならない強さ。
ファイア
主人公が炎に包まれ、体当たりで敵を倒せるようになる。ただし敵の魔法などは受けてしまう。弱くはないが、かゆいところに手が届かない感じの強さ。
ミクラス
小さなドラゴンが現われて、画面に現れる敵を片っ端から攻撃して倒してくれる。しばらく無敵に近いので、流石に強い。
クリスタル
放物線を描いて飛ぶ宝石型の魔法弾。ラスボスであるドラゴンに有効、とされている。道中では殆ど使い道がない。

道中灰色のレンガが山積みになっているところがあって、レンガを壊すとアイテムが出現することがある。「100」とか「300」とかの得点アイテム?が多かったが、時々「バイブル」が出た。バイブルを取るとすべての魔法を一回ずつ取ったのと同じ効果がある。魔法は上記の通りだいたいそれほど強くなかったのだが、それでも嬉しかった。
中ボス的存在の「デン」は結構強かった。雲に乗った一つ目の鬼で、ジグザグに飛行しながら体当たりしてくる。耐久力が高く、ちょっとやそっとでは死んでくれない。カッターなら一発で倒せるのだが、当てるだけでも一苦労だ。結局ボンバーを使うのが安定で、持ってる限りはいつもぶっぱなしていた。
そんなこんなで進んで行くと、やがて突き当たりに到達し、ステージ1は終了する。
その先はステージ2となり、今度は上へ上へと登っていくことになる。両端に時折突き出した岩があるのだが、それ以外は左右に動く雲の足場を頼りに登って行かなくてはならない。この足場が非常に厄介で、昔のゲームらしく当たり判定も厳しいので、慣れないと全然登ることができない。敵は確か鳥みたいな奴しか出てこないのだが、それさえも結構手強く感じた記憶がある。
ステージ2になると BGM もやや暗い曲になり、画面も殺風景になるため、かなり寂しい雰囲気だった。ただ、竜を倒しに岩山を独り登る魔法使い、というシチュエイション自体は中々熱いものがある。いずれにしてもいささか単調で、かつそれなりに長かったので、ゲームとしてはわりとしんどかった。
最後まで登りきると、いよいよラスボスであるドラゴンが待っている。MSX にしてはかなりでかい竜が頑張ってもそもそ動いていたような記憶があるにはあるのだけど、正直はっきり憶えていない。ドラゴンを倒すと一周クリアで、全三周という噂なのだが、あの内容で三周させられるのはわりと厳しいように思う。
なにぶんプレイ時間が短いので記憶が曖昧な部分も多いが、プレイしたいという思い入れはとても強かったから、その意味ではとても印象に残っているゲームでもある。移植としても、今思えば、マシンパワーの劣る MSX にしては中々頑張っていたと思う。
しかし、このゲームについては、やはり原作について語らなければならないだろう。次回 (32-2) ではそのアーケード版『WIZ』をとりあげる。

  • サブタイトルの「手」について全然説明してなかった。一定間隔で後方(画面左側)から出て来る敵で、ただ左から右へまっすぐ飛んでいくだけなのだが、こちらの魔法が全く通用しない。触れても一段下に落とされるだけで死ぬわけではないのだが、下段に居た場合には結果的に死ぬことになる。手首より少し上まであるグーパンチみたいな姿。