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[タイマン勝負!]心に残るゲームたち (33):『ギャラクシーファイト』

■『ギャラクシーファイト』 アスキーPC-6001,1983(『AX-7』所収)
1対1の対戦ゲームは多少できが悪くても遊んでいると盛り上がるものだが、できが好ければますます盛り上がる。『ギャラクシーファイト』も例外ではなく、地味なゲームだったが、何人か集まった時には実に楽しく遊べたものだった。
このゲームは宇宙空間での対戦をモチーフにしている。自機は一応戦闘機で、単発の砲を一門だけ装備している。
フィールドは正方形で、宇宙とはいえ奥行きの概念はない。また、正方形の上辺と下辺、左辺と右辺はそれぞれ同じ向きでつながっている、いうなればトーラス構造になっている(本当に宇宙なのだろうか?)。
自機には慣性が働いて、同じ方向要素を入力し続けると少しずつその方向への速度が増していく。減速するときも同じ。急には動けないし、急には止まれない。ただし速度には限度があって、上下方向と左右方向、それぞれ一定の速度までしか加速できない。
自機は上記の通り単発の砲を持っていて、これは弾数制限などはなくいくらでも撃てる。撃てる方向は上下左右と斜めの全8方向で、これはどちらに動いているかに関係なく常に8方向に撃てて、しかも弾には慣性がかからない。つまり、自機がどの方向に運動していたとしても、弾の飛ぶ方向や速度は変わらない。弾速自体はかなり速く、見てから避けることは殆ど不可能だ。
射程距離には癖があって、ある位置から弾が届く範囲を図示すると一辺がフィールドの幅の三分の一ぐらいの正方形が描ける。つまり、斜めの方が断然射程距離が長いのだ(√2倍)。手抜きのプログラミングでもそうなるけど、これは多分わざとそうしていたのだと思う。
あと、フィールドの上と下、左と右は繋がっている筈だが、弾はそこを通ることができず、フィールドの端に到達すると消えてしまう。
ルールはそれだけ。あとは各々が自機を5機ずつ持って、1機ずつ戦う。相手の弾に当たれば1機失い、お互いスタート位置から再スタート。双方が激突するか、あるいは同時に相手の弾を受けた場合は双方が1機ずつ失ってやはりスタート位置から再スタート。最後の1機を先に失った方が負けとなる。それも同時だった場合は引き分けだ。
実にシンプルだったが、それだけに燃えた。
性能差がないので、本質的には「待ち」が比較的強い。8方向にしか撃てないので、相手を自分の射程に捉えるために進入する方向が限られている。動きを読まれていたらまず待っていた方が勝つ。
そのため、攻める側は常に相手の裏をかかなければならない。一番シンプルな騙し討ちは、スタートと同時に相手に背中を向けて直進して、ワープして相手の背後を取る、という動き。警戒されていなければ面白いように決まるが、ばれていると完全にカモになる。弾は画面端を通過できないので、自機がワープしてからようやく弾を撃てることになるからだ。相手は適当なタイミングで撃っていれば、弾さえ撃たせずに勝てる。
一般的には、斜めから狙うのが定石だった。斜めの方が射程が長いからだ。おかしいとお思いかも知れない。自機の性能に差はないのだから。でも、特に縦横方向の射程を見せられた後だと、人間はどうしても円形の射撃範囲を想定してしまう。斜め方向の射程距離は、常に過小評価されるのだ。
実際に遊んでみて、この辺りのセオリーが確立されてくると、上で書いた砲の特性が実は結構練られたものだということがわかってくる。8方向しか撃てないのはねらい撃ちをシンプルにするためだし、待ちを有利にしている点でもある。斜めの方が射程が長いのは、まさに上で書いた通り、隙をつきやすくするためだ。
弾に慣性が働かなかったり、画面の端を通り抜けなかったりするのは、「どこから撃たれたかわからない死に方」がなるべく発生しないようにしていたのだろうと思う。
単純きわまりないゲームだったが、面白かった。
後年、対戦格闘ゲームがブームを起こし、格闘以外のジャンルへの対戦ゲームの浸透が試みられかけたとき、おれはこのゲームのことを思い出した。なにかヒントになる要素が詰まっているような気がしたから。あるいはいっそ、現代風にリメイクしても結構行けるのではないかとも考えたりした。
でもきっと駄目だろう。ここになにを足してもこのゲームはこれ以上に面白くなることはないだろう。せいぜい現状維持か、下手をすればかえってつまらなくなるか。そして、なにも足さなかったとしたら、いくらなんでもすぐに飽きられてしまう。
それでも、このゲームが面白かったことに変わりはない。おれは今でも時々、このシンプルさがたまらなく懐かしくなる。これ以上足す余地のない面白さに、むしょうに触れたくなるときがあるのだ。

  • 画面全体よりフィールドがずいぶん小さかったのも特筆すべき点で、PC-6001 の モード4は 256*192 だったが、おそらく 128*128 しか使っていなかったと思う。処理速度の関係だったのだろうか。大きくすれば面白くなるというものでもないので、これでよかったと思うが。
  • ガチでやり合うときは2本リードした時点でとにかくでたらめな方向に適当に軌道を変えながら最高速で飛び続ける「流星」という戦法がもっとも有効とされていた。単発の砲で狙っても中々当たるもんじゃないからだ。しかし、ゲーム的には最悪の展開である。
  • ゲーム開始前、英語でインストラクションが表示されるのだが、一文字づつタイプライターの打鍵音みたいな「ダダダダ ダダダダッ」という音とともに表示され、適当なキーを押すと表示が停止し、へんてこなジングルが流れてゲームスタート、という演出があった。元ネタはありそうだけど、中々かっこよくて好きだった。
  • 我が家にはあんまりいいジョイスティックがなかったので、どんなゲームでもキーボードが常に最強デバイスだった。対戦ゲームだとだいたい勝ち残りでやるので、キーボード側が連勝してそれをジョイスティック側がいかに止めるかみたいな勝負になることが多かったように記憶している。