黄昏通信社跡地処分推進室

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7〜8年前じゃないかと思うんだけど、家族で伊勢に行ったときに(ということは祖母がらみの法事か?)近鉄のホームで時間待ちが発生して、退屈しのぎにきょうだい4人で向かいのホームにある看板の文字を読む、ということをしたことがある。おれにとってはその文字は可読範囲のぎりぎり外で、文字だということはもちろんわかるがなにが書いてあるかは全然読めなかった。おれが読めないのだから他の兄弟も当然読めまい、と思ったのだが、驚いたことに兄と弟はお互いに補完しながらその文を口に出して読み始めた。(姉がそのとき読めたかどうか憶えていない。姉だけはコンタクトなので、普通に読めたかも知れないし、読めなかったかも知れない。)おれはけっこうショックを受けた。兄や弟とは同じ血を引いていて、視力も同じぐらいだと思っていたし、少なくとも自分だけが劣るとわかったことはそれまで一度もなかったのだ。それが、その絶妙な距離と字の大きさの看板のおかげで、はっきり浮き彫りにされた。そうは言ってもおれは日常生活において視力で困ったことは一度もない程度に目はいいし、この距離の看板を読めなくたって何の問題もない。それでも、他のふたりに負けたことがショックだったのだ。
幸いにして(というべきだろう)それ以来、これほど差がはっきり出るような状況に遭遇したことはない。