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和訳についての雑感

予備校で習ったことはだいたい忘れたが、いくつか印象に残っていることがあるにはあって、その中に英語の先生から聞いた話がある。

英文和訳の問題でよく皆さんが「意味はわかってるんだけど日本語で文章にできない」なんてことを言ってるのを聞きますがそんなのは嘘です。それはわかってないんです。人間は言葉を使わないと考えられない。意味をわかっているならそれは全部言葉にできるはずです。
だいたいこんなようなことを言っていた。痛いところを突かれたと感じた(おれも時々似たようなことを思っていたからだ)と同時に、これは正しいと思った。ちゃんと理解できていれば、とにかく文章にできる筈だ。わかってるけど文章にできないなんてのは単なる逃げだ。

最近和訳をやっていて、「なんとなく意味はわかるけど日本語にはあり得ない論理構成なので訳すのが難しい」文にぶちあたることが、まあちょくちょくある。で、これまではそういう文の前で立ち止まって、ああでもないこうでもないと頭をひねり、どうにか文章をひねりだしていた。
ところが最近電車の中で訳すことが多く、そうすると頭をひねってるうちに電車を降りる羽目になったりして効率がよろしくない。それよりはとにかく日本語に置き換え始め、少しでも形にして残す方が効率がいい。普通の日本語では絶対あり得ない言い回しやぐちゃぐちゃにつながった悪文でもいいから、とにかく原文の構造に忠実なことだけは気をつけて訳す。訳して、電車を降りる。そうしておくと、次に見たとき、あるいはもう少し後になって、もっとましな日本語の文章を思いつくことがしばしばある。
たぶん、英語を日本語にする作業とひどい日本語をましな日本語にする作業は結構質が違うもので、一度にやろうとすると効率が悪いのだろう。今まではそれに気づいていなかった。今更に過ぎるが少しだけ前進できた気がする。こういうことも中々に面白いものだ。

で、その「普通の日本語ではあり得ない〜原文の構造に忠実なことだけは気をつけて訳す」ってのがつまり「直訳」なのですね。直訳というとどうもネガティヴなニュアンスがあるけどそんなことなくて、むしろやっぱり直訳ができないと始まらないのではないか。そこら辺は日本の英語教育で微妙にちゃんと教えられてない部分ではないかな、という気はする。もちろん直訳だけでも話にならないのは確かなのだけど。

あと、単語の意味だけは知らないとどうにもならないので、10 代のうちに単語帳とかで詰め込むの結構意味あると思う。おれは絶望的にサボってたので、辞書を引く回数が多くてしょうがない。