黄昏通信社跡地処分推進室

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科学の子((C)森見登美彦)

息子の話三題。

風鈴

これはおれは見ていなくて妻が目撃した。
実家のベランダに風鈴が吊るしてあって、ちりんちりんと鳴っていたのだが、それを見て妻が「ああやって吊るしておくと風が吹いたとき音が鳴って涼しい気分になるんだよ」と言ったところ、ベランダに飛び出して行って実物に触り、じっと見たあと「このー、まんなかのぼうが、まわりのまるいところにぶつかって、こえがする*1んだね。」と報告してくれたらしい。物を観察する、仕組みを考える、それを理解する、言葉に出す、中々科学的態度ではないかと感心した。

ナノックスのボトル

風呂の遊び道具としてナノックスの空きボトルを置いているのだけど、先日湯船で遊んでいる時にそのボトルの中にアヒルのおもちゃから外した小さな笛のパーツを入れてしまった。ボトルはただでさえあまり広口ではなく、そのうえ口の筒が内側にすこし立ち上がっているため逆さにしても笛は素直には出てこない。「これ簡単には出てこなくなっちゃったぞ」と言ったら、息子は即座に「おみずをいれたらでてくるんじゃない?」と言って実際に水を入れ始め、半分以上水が満ちた時点で口を下に向けて流し始めた。少し経つと思惑通り笛が流れ出してきた。多少は運に恵まれた面もあっただろうが、自分の知識から解決策を考える、思いついたらとにかくやってみる、という態度が素晴らしかった。

アース線

ある朝起きた時におれのパソコンがテーブルの上に出しっぱなしになっていて、その電源ケーブルにアース用の線がついているのを息子が発見して「それなあに?」と訊いてきた。これはアースというもので例えば漏電なんかしたときに電気を地面に流すものである、ということを簡単に説明してから、家のコンセントの下のところについているアース端子のカバーを外してみせて、ついでに端子台のねじまでゆるめて、使うときはここに挟んでねじを締めて使うのだ、ということを教えたら、「じゃあだいどころのところとおんなじだね」と言う。なにかと思ったら台所の流し台の下の引き出しを開けて見せてくれた。引き出しの裏にはたしかにディスポーザー電源ケーブルが通っていて、それはアース線も接続されている。こちらについては教えたことはなかったから、自分で見たものを(意味はわからないながらに)憶えていて、それを新しく得た知識と比較して「あれだ」ということを識別したということだ。

たぶんこういうことが、この子のすぐれてるところだ。どれほどのものかはわからないし、いつまで続くかもわからない。でもそれを見出してやれるのは多分親であるおれたちぐらいだし、それであればほめすぎるぐらいほめてやっていいところなのだろう。いざほめてもどうも反応が鈍いので(というか大抵あんまり聞いてない)、張り合いがないのだけど。

*1:こえがする:「音が鳴る」の意。声と音を概念として区別していないので全部「こえ」になる。可愛いのでほっといているがほんとはいちいち訂正した方がいい気もする。