黄昏通信社跡地処分推進室

黄昏通信社の跡地処分を推進しています

《蛇崩/Jack Zooray》

というわけで、あらためて蛇崩について。とりあえず蛇崩についてぐぐってみたらこんなことになっていて驚いた。言われてみるといかにもフィクションの苗字ぽい言葉で、なかなか目のつけどころがよい。キャラクターデザインと下の名前は好きになれない。


蛇崩は今でいう目黒区にあったのだが、今は町名としては残っていない。かつてはその名の字があった。目黒区のウェブページにこんなページがある。すごくいい。
目黒の地名 蛇崩(じゃくずれ)
現在の地図を Google マップで見てみると、蛇崩荘という建物がある。この辺りが字蛇崩だったと思われる。蛇崩荘は「崩れそう」とかからかわれてると思う。
Google Map: 蛇崩荘
この蛇崩荘のすぐ北側を東西に弧を描いて走っているのが蛇崩川緑道、つまり暗渠となった蛇崩川だ。先ほどの目黒区のページを見ると、蛇崩川が字蛇崩の北側の字界*1だったことがわかる。そしておそらく、蛇崩荘の北東に見えている交差点(FUJIYAco.という字のそば)から北に伸びている道が烏森と三宿山の字界だろう。南に下ると、東西方向に屈曲しながら走っているやや太い道があって、それが蛇崩の南側の字界と大体一致しているように見える。その2本の字界と東横線を見ると、字蛇崩のおおよその形が見えてくる。


蛇崩の由来についてはやはり先ほどの目黒区のページにふたつほど説が出ているが、そのふたつを併記したあと


いずれにしても、蛇崩地域の北側を蛇行する蛇崩川が浸食した地形がもたらした地名といえよう。
とさらりとまとめている手腕は個人的には評価したい。かくありたいものである。多分これはその通りで、蛇崩という地名と蛇崩川とは不可分のものだったのだろうと思う。


蛇崩という地名は名古屋にもあったようだ。これは面白かった。なんとなくかぶらなさそうな気がするからだ。
(公式には)消えた地名・名古屋市天白区


ただ、現在蛇崩という地名で一番有名なのは蛇崩交差点かもしれない。上で示した Google マップでも蛇崩荘の真西に見えている「蛇崩」と書かれた五叉路だ。
蛇崩への道 一期一会の旅物語
ここは蛇崩でぐぐると1ページ目に出てきたタクシー運転手の方のブログで、同業者向けの tips 的なことも書かれている。おもしろい。リンク先によると小さいながらハブ的な役割を果たしている交差点で、タクシー運転手的には知っておくといいポイントらしい。


祖母が亡くなる少し前、ある病院に長く入院していたのだが、実家からその病院に行くためにこの交差点を通った。当時食えない程度のアルバイトをしながら実家に寄生していた僕は祖母の世話をする母を時々車で送って行った。助手席に乗っていた母がこの交差点の名を見て素敵な名前ね、たぶんもう町の名前には残ってなくて交差点の名前だけが残っているのね、というようなことを言っていたのを憶えている。祖母はこの頃はもうずっと眠ったようになっていて外界からの刺激にもほぼ反応を示さなくなっていた。その祖母の顔を拭いたり髪を整えたりする母を横目に見ながら僕はベッドの脇の椅子に所在なく座って窓の外を見たりしていた。正直なところ特に感慨はなかった。免許を取ったはいいがこんなことでもないと車に乗る機会がないので運転していた。ずっと後になって母からいつも左に寄りすぎてて怖かったわと言われた。

*1:字界:あざかい。字の境。初めて知った時耳で聞いたので、正しい漢字が全く浮かばなかった。