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このかいな一本で

最近の電車はシングルアームパンタグラフが主流だ。「パンタグラフは菱形」という固定観念に風穴をあけた*1カッコいい奴だ。従来のパンタグラフと比べると場所もとらないし雪も積もりにくいし軽いし安いし風切り音も小さいし、といいことずくめらしい。しかし集電装置の歴史を考えてみるに、これってビューゲルと形状的には大差ないんじゃないのかとふと思った。


ということで軽く調べてみる。
集電装置 -- Wikipedia
Wikipedia の鉄道関係の項目は総じて記載量が多く、明らかに鉄道ファンと Wikipedia の親和性は高い。その事実と記述の信頼性が高いかどうかの相関関係は不明だが、ここでの調べものとしては充分だろう。


ビューゲルはこんなの
欠点はいくつか挙げられているが、最大の欠点は以下のもの。


トロリーポールと同様に架線に対して斜めに接触するので、架線の高さが変化すると架線に対するビューゲルの接触角度が変位する。架線を押し上げる圧力の変動が大きく離線しやすい。反転時にも架線とビューゲルがバウンドして離線する事が多い。
ようするに構造的にどうしてもテンションが一定にならないので離線が起きやすく、そして離線はさまざまなリスクを生む。リンク先でこれの下に列挙されている欠点はどれも離線に起因しているのだ。
パンタグラフはひし形をとることで真下から、それも比較的安定した力で集電子を押し上げることができて、さらに方向転換の必要もなかった。複雑さや重量は増したが画期的な発明だったと言ってよかろう*2
シングルアームパンタグラフは、厳密には“パンタグラフ”ではない、という批判にもかかわらず、そのパンタグラフの持つ利点をすべて持っている。なおかつ軽量化と省スペースを成し遂げてすらいる。おかげで現在新造される車両で旧来のパンタグラフが採用されることはほぼ完全になくなったのだそうだ。ビューゲルとは役者が違いすぎるというところだろう。


ところでリンク先の記事でトロリーポールについて「突っ込む方向で使うと架線を傷つけたりするのでなびく方向で使うのが原則」と書かれていて感心してしまった。つい前側を上にしてとか正確を期して書いてしまいそうなところだが、「突っ込む」「なびく」の方が感覚的でわかりやすく、おそらく誤解されるおそれも殆ど無いと思う。どんなことがらに対してもこんな風に上手く言える言い回しがあるわけじゃないけど、それでもかなうならばかくありたいものだ。

*1:というか、あの菱形の奴こそをパンタグラフと呼ぶのであってシングルアームのは厳密には「パンタグラフ」じゃないんじゃない? みたいな話もあるらしい。おもろい。

*2:でもこれもリンク先に書いてあったんだけどパンタグラフって誰が発明したかわかってないらしい。こんなに凄いのに。作った人は自分の作ったものにあんまり興味がない質だったに違いない