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『自然図鑑』

自然図鑑 -- 福音館書店
もう結構前だけど、妻が古本屋でこの本を買ってきた。息子にはまだ少し早いが自然と触れ合うための入口になってくれたら的な意図である。というかおれにしても妻にしても昆虫少年/少女とかそういうのじゃ全然無かったので、息子がある日突然そっち方面に目覚めたりしてもどんな風に導いてやればいいかさっぱりわからない。むしろ我々にこそ必要な本かも知れぬ。
というわけでトイレ文庫にしてぱらぱらめくっているのだが、普通に知らんことがいっぱい出ていて実に興味深い。トカゲとカナヘビの違いをこの年になって初めて知った。カナヘビの方が「ガサガサしていて地味な感じ」なんだって。この身も蓋もない書き方がよい。あとスズメはツバメの前年の巣を借りて使ったり、時には作りかけの奴を奪って使ったりすることすらあるらしい。虫も殺さないような顔して、って思ったけど考えてみるとあいつらめちゃめちゃ虫喰うよね。人里では使われてない通気口とかパイプガードレールの端が開いてるところとかに巣を作るらしいんだけど、自然界ではどうするんじゃろかってちょっと思ってた。
ところどころ漫画パートがあるんだけどそこもイラストレーターの人が描いてるので絵柄が漫画の文脈から外れていて、垢抜けないんだけど妙な味がある。
初版は 1986 年とかでもう 30 年近く前で、著者の「自然を大切にしよう、自然と共存して生きていこう」という強いメッセージはいささか古めかしく、時に少し暑苦しく感じられるが、あらためて考えてみるとそのような態度の重要性は薄れたわけではまったくなくて、折に触れて意識しなければいけないことなのだと思う。そしてその意識を持つためにまずは自然を知って触れてみようというのはとてもまっとうなアプローチだ。それがどこまで伝わるかについては、ちょっと懐疑的にならざるを得ないのだけど。