黄昏通信社跡地処分推進室

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『テクネ 映像の教室』。
おととしぐらいからEテレでやってて、存在自体は知っていたのだけどなんとなく見たことがなく、今年の2月にふと思い立って録画して見てみた。案の定面白かった。各回「ループ」「マルチスクリーン」など映像の技法がサブタイトルになっていて、その技法を使った既存の作品が紹介されたり(『テクネ・ワークス』)、クリエイターが出てきて(おそらくわりと短期間で)その技法を使った短い映像作品を作ったりする(『テクネ・トライ』)。そのころ放送していた第2シーズンは「参加するテクネ」というのがサブテーマになっていて、映像とは関係ない仕事をしている人がゲストで登場し、スタジオでやはり短い映像をつくる(『テクネ・スタジオ』)。また、途中で差し挟まれるタイトルコールも、その回の技法を使った映像になっている(『テクネ・ID』)。
5回分見た印象では、放送される既存の作品も面白いし、即興的な短い映像作品もだいたい面白い(たまにハズレがある)。逆に、ゲストが作る映像は殆どが大して面白くない。多分技法だけじゃなくてある程度こんな感じで行きましょうかみたいなところまで決まっているのだと思うのだが、素人が面白い映像を作るのは中々難しいものだと感じた。


ついでなので個別の評価をごく簡単に。見たのは「マルチスクリーン2」「ループ2」「ワイプ2」「タイポグラフィ2」「ロトスコープ2」の5回。

テクネ・トライ

マルチスクリーン:「目線」が技法と噛み合っていていい。立体の透視図が見方によって同じ線でも真逆に見える効果が、スクリーン切り替えと併用されて見事。「雨音の由来」は狙いはわかるんだけどやってみたら思ってたほどは面白くならなかった感じ。
ループ:「primer」、線香花火を題材に。いじりすぎて台無し、まるでよくない。「ひとりひっぷほっぷ」はヒップホップとループというそもそも相性がいいものを組み合わせてるのでずるいっちゃずるいけど、楽しい映像になっている。
ワイプ:「身体の動かし方」は身体の動きに合わせて身体の一部が切り離されて回転したり浮遊したりする。気持ち悪いだけでいまいち。「裂ける面、続く線」はテーブルに並べたドミノを人が腕を伸ばして倒すだけの映像なのだけど、編集が素晴らしく見事で見ていて大変気持ちいい。
タイポグラフィ:どちらもあんまり憶えてない。
ロトスコープ:「INCREASE」がとても楽しい。マスクをかぶった人が椅子に座ったりラジコンを動かしたりプロポをごみ箱に放り込んだりする一連の動きの映像を、どんどんコピーして重ねていって分身みたいな効果を出す。好きなんだけどこれ「ロトスコープ」か?というのだけが疑問。「もういっかい」、歩み去る女の子を実写で撮って、それをトレースして鉛筆書きのアニメーションに。もうあざといの一言なんだけど、狙い通りとても切ない映像になっていてその技術が素晴らしい。

テクネ・スタジオ

マルチスクリーン:花屋さんが日用品をいろいろ並べたり束ねたりして花を作ろうというものだったけどさっぱり面白くならなかった。
ループ:中学生の女の子2人組で、片方が撮影、もうひとりがモデル。モデルの子が下手から上手に歩いて行く映像を毎回衣装を替えながら何本も撮って、それをループでつなげる。下手で入ってくるところと上手で出ていくところで手足を合わせるためにバミったりするのもなるほどという感じ。テクネ・スタジオの中では一番面白かった。
ワイプ:ギター奏者と三味線奏者が同じ曲を弾いて、その映像を重ねて曲の展開に合わせてワイプするんだけど、それ以上でもそれ以下でもなく。
タイポグラフィ:出演者(失念)の名前をイタリックでローマ字にして、それを並べ替えて自分の似顔絵を作るさまを撮る。なにも面白くない。
ロトスコープ料理研究家が出演。枠の中で暴れる男の映像を撮り、次に弁当箱のごはんゾーンに先の映像に合わせて人型に切り抜いた海苔を置いて、海苔を取り換えながらひとこまずつ撮って最終的に弁当箱で暴れる海苔男の映像を作る。感心はするけど面白いというより大変そうという感想になってしまう感じ。


あとこの番組オープニングがとてもよくできてて、あれは一見の価値がある。
8月からシーズン3が始まるらしいので、興味を持った方は是非。