黄昏通信社跡地処分推進室

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L/R ネジ

「緩まない」ねじ革命 2000年の歴史、VBが変える:日本経済新聞
はてブでも書いたけれど、おれは 10 年以上前にこれと似た原理のボルトとナットを展示会で見たことがある。当時おれはアルバイトのメンテナンスマンで、展示会については業務ではなく個人的な興味で行き、内容については殆ど憶えていない。が、左ねじと右ねじのナットを組み合わせて緩まない構造を実現したボルトのことだけは印象深く、今に至っても憶えている。サンプルももらったのだが、バイト先に置いてきてしまったか、持って帰ってきたが使いどころがなく*1処分してしまったかどちらかだったと思う。


そのねじでは雄ねじ(ボルト)の方には互い違いのらせんが二重に切ってあった。らせんが交差する部分はねじ山が切れていて、多分その分許容トルクが小さくなるんじゃないかなという印象だった。それと確か、左ねじ*2の方のねじ山の方が浅かったような記憶がある。また、ふたつのナットをロックする方法はなくて、ただぴったり両方ぶつかる方向に締めるだけだった。だから同じ方向に回る仮定なら緩まないけど、多分それぞれ逆に回って結局は緩むだろうなと思われた。


株式会社 NejiLaw
NejiLaw 社のボルト「L/R ボルト」は“螺旋構造を持たない”と書かれている。画像だけではわかりづらいが、多分ねじ山が大きいところとほとんどないところがあって、たとえば東西方向でねじ山の大きさが最大になって、南北方向では大きさが0に近くなる。ひとつひとつの山は螺旋であればねじの軸に対して斜めになるけれど、このボルトでは軸に垂直に切ってある。そして、東側の山と西側の山で高さをピッチ半分ずらしてある。そうすれば、右ねじナットは東の1階から入り、北を回って西の中2階へ、さらに南を回って東の2階へ、という風に進む。左ねじナットはその逆で、東の1階から入り、南を回って西の中2階へ、さらに南を回って東の2階へ、という風に進む。
……が、これだとねじ山の効く部分が圧倒的に短いので、かけられる力が弱い。と思っていたら id:takuzo1213 氏がこんなブコメをつけてくれていた。


takuzo1213 工学, ネジ
面白い。当然許容トルクが落ちるだろうと思ったら、こちらの記事によると解決してるのね。http://www.kanto.meti.go.jp/webmag/kigyojoho/1301kigyou_sei.htm 2014/09/01
このリンク先を読んでも細かい説明はないのだが、実際は上の説明よりもずっと複雑な形をしていて、それが強いトルクと左右ナット対応の両方を実現しているのだろう。
そして、おれがかつて見たナットと決定的に違うところは、左右のナットを結合する構造を有している点だ。ナットには二種類あるようで、「パーマネントロックタイプ」はふたつのナットの結合部にラチェット構造を持っていて、一度噛み合わせると外れないようになっている。「リムーバブルロックタイプ」は結合部は普通の溝で、多分こちらはもともとふたつのナットがくっついた状態で作られている。


実用になり得るのかとか、コストが見合うほど作られるのかとか、そういうことはわからないけど、昔たまたま見て印象に残った技術が洗練されて再び現れていることを面白いと思うし、なにかわくわくするところがある。もう何年かするとまた思いがけないところで出会うことがあるかも知れない。

*1:M20 ぐらいだったので

*2:でいいのかな? 一般的なねじと逆の方