黄昏通信社跡地処分推進室

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『ICO』 ソニー・コンピュータ・エンターテイメント,2001 

今のところ4時間ぐらいしかプレイしてないので、その時点での感想。


名作の誉れ高いこのゲームだが、プレイしたことはなかった。我が家にあるこのソフトもKがずっと前に貸してくれてそれっきりずーーっと借りっぱなしになっているものだ。先週金曜日に家に帰ったら何故か妻が始めていて、まったく今更ながら始めてみた次第。
ゲームの目的はまったく単純で、主人公の少年イコを操作して、囚われの少女ヨルダ(作中ではまだ名前が出てきていない)の手を引いてふたりで古城から脱出するというそれだけだ。古城はさまざまなギミックのある言ってみればダンジョンで、フロアを行ったり来たり物を動かしたりスイッチをいじったりしながら先へ進んでいく。一応アクションゲームではあるがそこまで難しいアクションは多くなく、むしろパズル要素の方が強い。『ドラゴンクエスト8』の一部のパズルっぽいダンジョンに少し似ている。あと『アウターワールド』とも通じるところがあるように思う。そこまで難しい仕掛けはないと思うのだが何ができて何ができないかを見極めるのが難しく、あと普通に歳喰って頭も固くなってるのでそれなりに苦労している。


イコのほうがヨルダより身は軽く、できるアクションも多い。しかしヨルダにしか開けられない通路もあるし、そもそもヨルダを助けなければ意味がない。したがってイコは先にひとりで駆け回り、ヨルダのためにいろいろと「おぜんだて」をする。そして準備ができたら、イコはヨルダの「手をひいて」一緒に歩く。難所では自分が先に進み、向こう岸から「手を差しのべる」。ヨルダは勇気を振り絞って身を投じ、イコがそれを受け止める。このもどかしさ、まどろこしさ。安全なところまで引き上げた時の安堵。


この「先に行って手を差しのべる」アクションをやっていて、あるゲームを思い出さずにいられなかった。『セプテントリオン』だ。大西洋で転覆した豪華客船から沈没前に脱出するのが目的のアクションゲームで、船外への道中でどれだけ道連れを助けられたかでエンディングが変わる。よって見つけた人はなるべく助けなければならないのだが、その人たちが AI で勝手に行動する上に AI は基本的にあほで、垂直になった船体内で足の下にある扉を開けて出て行ってそのまま垂直に落下して死んでしまったりする。そのゲームで多くの人を助けるために必須であった動きが「先に行って手を差しのべる」だったのだ。もちろん作った人も会社もまったく違うからきっと偶然であろうけど、おれは「おお、このゲームはあの『手をのばす』アクションをたったひとりのために存分に使うゲームなのか!」と思った。まあそんな奴がひとりぐらいいてもよかろう。


それにしても、もう 13 年以上前のゲームだというのに、画面の美しさには驚かされる。まあ家にある最新ゲーム機がプレステ2であるおれが言っても何の説得力もないのだが、しかし古びていないグラフィックであると思う。センス、という言葉で片付けるのは安直過ぎるのだけど、技術的には見劣りしても古臭い感じがしないグラフィックというのはままあって、個人的には『R-TYPE』や『ファンタジーゾーン』などがそのカテゴリに入るのだけど、このゲームのグラフィックもそういうものであるような気がする。
それと、高さの演出が抜群に上手い。ゲームのデザイン上壁か奈落が行く手を阻むのだが、奈落の描き方が上手いのだ。そんなに深いところまで描いているわけではなく、むしろ端折り方が巧みで、建物の中では暗くなっていたり、屋外であればうっすら霧がかかっていたり、高いところでは風の音がびゅうびゅうと聞こえたり。イコをゆっくり歩かせるのは操作的にややめんどくさいという事情もあって、崖っぷちや柵のない通路を歩く時は文字通り手に汗握る羽目になる。


そんなわけで、結構楽しく遊んでいる。面白い。ヨルダかわいい。
またなにか書きたくなったら書くつもり。