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光線銃のこと

初代ファミコンの周辺機器に「光線銃」があった。今調べてみると対応ソフトも3本しか出てないらしいのだが、当時はそれなりに存在感のあるデバイスであったと思う。『ダックハント』や『ワイルドガンマン』といえばタイトルはご存じの方も多いのではないだろうか(あと1本は『ホーガンズアレイ』で、やや知名度は落ちる気がする)。


光線銃は本体とテレビだけで機能する。その他の受光器や発光器を取りつける必要はない。これは当時流石に不思議に思った憶えはある。あるが、それ以上追求しようとも思わなかった。そもそも家にはまだファミコンすらなかったし、光線銃もおれが実際に見たのは多分二回ぐらいだったのではないか。


ずっと後になって、光線銃の理論的な原理を聞くか読むかした。
その前にまずブラウン管の原理を説明しなければならない。ブラウン管は電子銃で電子を画面に向けて飛ばし、それが当たった部分が発光する。電子の方向はすさまじい速度で変えられ続け、命中位置が画面全体をカバーする(手慣れたお好み焼き屋の店員がマヨネーズをお好み焼きにまんべんなくかけるところを想像するとわずかにイメージがつかめるかも知れない)。1/60 秒で画面全体の発光が終わり、電子銃の発射方向は元の位置に戻る。つまり、理論上はブラウン管は常に一点しか発光していない。
一方光線銃は指向性の高い受光器で、ブラウン管の点の発光を検知することができる。これを画面に向けていれば、あとは受光のタイミングとその瞬間の電子銃の向きを突き合わせることで、光線銃がどこを狙っているかがわかるというわけだ。おれはてっきりファミコンの光線銃はそういう原理なのだと思っていた。


しかし、先週ひょんなことからあらためて光線銃に思いを馳せていたときはたと気づいた。この原理で機能させようとしたら、命中判定はファミコン本体では行えない。当たり前だが、リフレッシュレートよりずっと短い時間でタイミングを突き合わせなければならないからだ。ということは光線銃の中に、少なくとも突き合わせるシステムと、そのタイミングを座標に変換してファミコンに渡すエンコーダまでは持っていなければならない。そんなにいろいろ入ってるものだろうか? そんなに鋭い指向性を持てるだろうか? そんなに短い時間の光を拾えるだろうか?


おれはもう一度光線銃の原理を調べてみた(インターネットで、だけど)。
ぜんぜん違った。
ファミコンの光線銃対応ソフトでは、銃のトリガが引かれた瞬間、命中判定用の画面を一瞬だけ表示するらしい。その画面は真黒で、ターゲットの部分だけ真白に描かれている。銃には受光器が内蔵されていて、光を検知すれば命中と判定する。表示は一瞬なので人間の目には殆ど見えない。シンプルでエレガントなシステムだ。これはすごい、と唸っていたら横井軍平氏が考案したものであるらしい。流石という他ない。システムを知っていれば「だったら適当な光源に向けっぱなしにしておけば常に百発百中なのでは……?」なんて穴も考えつかなくはないのだが、受光を検知する光量に制限をかけたりとか、多分何らかの対策はとっていただろう。


さて、そこであらためて疑問なのだが、上で書いた、おれがそうだと思いこんでいた光線銃の原理はいったい何に使われているのだろうか。なにか別のものと勘違いしているのは間違いないと思うのだが、それはいったいなんだったのだろうか。