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NFL 2015 -- Super Bowl 50 @ LEVI'S Stadium

有休とった。

Denver Broncos (12-4 / AFC #1) vs Carolina Panthers (15-1 / NFC #1)

終わってみれば、ニュートンの若さ、ではあろうか。
5年目のこのモバイル QB がこの試合で残したスタッツは 18/41-265yds-0TD-1INT で、ランが 6att-45yds。五割に届いていない成功率はレギュラーシーズンの 59.8% に比していかにも悪いし、41 回投げて 265 ヤードというのもいい数字ではない。しかしなにより、ランの6回というのはいかにも少なすぎる。一回あたり7ヤード以上出ていたのは流石というほかない数字で、これこそが“スーパーマン”の強みだった筈ではないのか。むろんプレイの選択はむしろコーディネイターの責任に依るところが大きく、その意味ではニュートンばかりが責められるものではなくもある。ただ、唯一オフェンスでタッチダウンをあげた 1Q〜2Q のドライブで、もっとも印象的だったプレイは敵陣に入ってからの左サイドへのデザインのラン→直後の右サイドへのスクランブル、だった。ああいうのをもっと見たかった。
マニングもむろんほめられたスタッツではなく、というか 13/23-141yds-0TD-1INT は負け試合の数字と言っていいだろう。短いパスですら時に綺麗にスパイラルがかからず、スローで見るとほとんど必死の形相で投げている。ロングパスはとうとう一本も投じなかった。肉体的な限界に近づいていることは明らかなパフォーマンスだった。それでもディフェンスが築いた優位を一度も譲ることなく試合を作り切ったのはこの大ベテランの経験と能力のあらわれだろう。インターセプトだけは余計だったが、敵陣深い位置だったのはむしろ幸いだったというべきか。
MVP のヴォン・ミラーはシーズン中からも大活躍だったが、この試合では特に神がかっていて、2.5 サックにファンブルフォースが2回、それもどちらもタッチダウンにつながった。文句なしの受賞だ。スピード、視野の広さ、勤勉さ、すべてすさまじい水準で、オフェンスからは脅威以外の何者でもない。こちらも五年目で、ニュートンが全体一位指名された 2011 年ドラフトの全体二位でブロンコス入りしている。直接対決でくっきり明暗が分かれる恰好になったのは面白い。
パンターのブリットン・コルキットの活躍についても記しておきたい。この日ブロンコスは 3DE が 1/14 で、コルキットは実に8回パントを蹴っているのだが、平均 45.6 ヤードという数字を残した。それもテッド・ギンを擁するパンサーズ相手ということで徹底的にディレクショナルパントを蹴って、それを絶妙なコントロールで右サイドラインぎりぎりに落とし続けた。展開的に一本でもビッグリターンを許していればどう転んでいたかわからなかった試合だけに、この安定したパフォーマンスの貢献度はかなり高かった。
ともあれ、おたがいのディフェンスがクオーターバックを苦しめ続ける、緊張感のある試合だった。合計 12 サックはスーパーボウルレコードとのことで、さもありなんという数字だ。最後は点差がついてしまったが、中々面白い勝負であったと思う。
ニュートンはあんなキャラだけど意外ともともとはプレッシャーに弱いのではないかと思っていて、というのは最初のシーズンめちゃめちゃ逆転負けが多かったんだよね。もちろんそれも必ずしもニュートンの所為だけではないんだけど、リードするとパフォーマンスが落ちる、勝負どころの試合ではもろい、という傾向は多分にあって、最大の舞台に来てそれが出てしまったというところはあったのではないか。とはいえ五年間で最初の二年ぐらいからは想像がつかないほどの成長を遂げていて、まだ伸びしろがあることにも間違いはなく、またこの舞台に戻ってきてほしいものだとは思う。
マニングは多分、これで引退するのではないか。ブロンコスに移ってからの肉体的な衰えは隠しようもなく、特にこの二年のパフォーマンスの低下は素人目にも明らかだった。今季はレギュラーシーズンでも、休んでいた時期が結構あったとはいえタッチダウンパスを9本しか決めていないのだ。そしてインターセプトはそのほぼ倍の 17 本に及んでいる。それでも現役にしがみついていたのは、最後にもうひとつリングを取りたかったからに他なるまい。これで一応弟に並んだことになるわけだし、スーパーボウルの勝敗も 2-2 の五分に戻した。来季以降肉体がこれ以上衰えることはあってももう戻ることはない。それでも続けるとしたらもちろん見てみたいが、まあ、無いだろう、としか思えない。本人は試合後のインタビューで去就を明らかにはしなかったが、それも試合前から決めていたことだろう。
二年前の敗戦に寄せて、おれはこんなことを書いた。


ペイトン・マニングのキャリアはまだ終わりではない。現在の契約だけでもあとまるまる3シーズン残っている。その中であと1回、ねがわくば2回、スーパーボウルに駒を進めてそして勝つことができるなら、この試合の記憶はかなりの部分まで払拭できるであろうし、現役最後の2年にスーパーボウルを連覇したジョン・エルウェイのような締めくくりだってそう非現実的な妄想ではない。もちろんペイトン本人だってそんなことは百も承知の筈だ。あるいは失意の一晩を過ごしたかも知れない。だが、翌朝には彼はあの額を前に向けて、来季へ向けてのたゆまぬ一歩を踏み出したに違いないのだ。
これを書いた時と違うのは、今の方がより衰えがはっきりしているということだ。なればあと1回というのはもはや現実的ではなく、今年の結果は望みうる最高のものであろう。そこに辿り着いたことに対して、惜しみない賛辞を送りたい。


最終スコア:DEN 24-10 CAR

追記

ニュートン、最後のファンブルでボールに飛び込めてないのな。あれはまずかったし、本人にとっても長く悔やまれるプレイになるだろう。リカバーできていたかはわからないが少なくともボールに手は届いた筈だ。シーズン中であれば怪我を避ける選択はあり得ただろう。だけどこれはスーパーボウルだったのだ。誰よりも先に手を伸ばすべきだった。手を伸ばさなくっちゃいけなかった。