黄昏通信社跡地処分推進室

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けい-はん

「畔屋」と書いてなんと読むか。おれは「『あぜや』……?」と思ってしまったのだが正解は「ほとりや」だった。そういえば湖畔というのはこの字を書く。おれは畔という字を見るとどうしても真先に「畦畔(けいはん)」という用語を思い浮かべてしまう。
不動産用語でいうところの畦畔はもともと田んぼの畦道だった土地のことで、田んぼ本体の地積に含まれているものが「内畦畔」、含まれていないものが「外畦畔」で、いずれも田んぼ本体の所有者に所有権があるものとされる。問題はどちらでもない共用や所有を放棄された畦畔で、俗に「二線引畦畔」と呼ばれ、これは財務省の所有する普通財産とされる。田んぼであるうちはいいのだけど、住宅地などに転用されたあとに問題となることがある。


閑話休題。なぜ「ほとり」が「あぜ」なのか。


はん【畔】[漢字項目]
常用漢字] [音]ハン(漢) [訓]あぜ くろ ほとり
1 田と田とを分ける境界。あぜ。「畦畔(けいはん)」
2 ある場所の周辺。ほとり。「河畔・湖畔・江畔・池畔」
どちらが原義かはわからないが、熟語の用例を見るにもともとは2の意味があってそこから1が派生したようには思われる。「田んぼの周辺」→「あぜ」を意味するようになったと考える方が逆よりは自然だ。とはいえ「田」+「半」という成り立ちを考えるとあぜが当然先であるようにも思える。こういうのはちょっと面白い。


それで、冒頭の畔屋なのだが、箱根の芦ノ湖のほとりに今度オープンしたお店らしく、先日電車に中吊り広告が出ていた。そこに書かれていた宣伝文句が「老舗土産処誕生」で、まあ言わんとするところはわかるけど明らかにそれは間違ってるじゃん、という雑さで笑ってしまった。そういう設定であるってことなら別にいいのかねえ。


追記:書くの忘れてたけどくろって訓があるのは初めて知った。確かに畔柳(くろやなぎ)さんって苗字の人いるな。あぜに柳だと、なんだか情景が浮かぶようだ。