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ペイトン・マニング引退

もっとずっと早く発表するだろうと思っていた。


QBマニングが引退を正式表明、「いい戦いをしてこられた」


おれはちょうど 2011-2012 シーズンから NFL を見始めた。ペイトン・マニングが怪我で全休したシーズンだ。だから翌年デンバー・ブロンコスに移籍して以降がおれにとってのペイトン・マニングということになる。そこからの4シーズンは、ひとことで言えば「急速な衰えに直面するスーパースターの晩年」だった。
2012 シーズンは 3-3 から破竹の 10 連勝で一抜けするも、フラッコにやられて二没。
2013 シーズンはスーパーボウルまで進むが、まさかの惨敗でリングに届かず。
しかしここまではまだ衰えはそれほど見られない。おれはこのスーパーボウルのあとこんなことを書いている。

ペイトン・マニングのキャリアはまだ終わりではない。現在の契約だけでもあとまるまる3シーズン残っている。その中であと1回、ねがわくば2回、スーパーボウルに駒を進めてそして勝つことができるなら、この試合の記憶はかなりの部分まで払拭できるであろうし、現役最後の2年にスーパーボウルを連覇したジョン・エルウェイのような締めくくりだってそう非現実的な妄想ではない。
NFL 2013 -- Super Bowl XLVIII: Denver Broncos (AFC #1 seed) - Seattle Seahawks (NFC #1 seed) @ MetLife Stadium
少なくともここでいう“現在の契約”までは全うするだろう、できるだろう、とおれは考えていた。そう思っていた人は多かったのではないか。


しかし、2014 シーズンになるとレギュラーシーズンにまで肩の影響が出てきて、シーズン後半には力のないパスが散見されるようになる。この年はまたしても一抜けを果たしながら、コルツに完敗して二没。
そして今季、2015 シーズンには、マニングの肩の衰えは隠しようもなくなっていた。おれは開幕週の時点ですでにこう書いている。
昨季までは冬場、特に年明けぐらいから目につくようになっていたスパイラルが悪くてふわっとしたボールが(おれの知る限りもともとそこまで綺麗な回転をかける投げ手ではない)、開幕戦のこの試合で何本か見られるようになっている。これが衰え、あるいは首の負傷の後遺症の悪化だとすれば、もはや1シーズンを戦い抜くことは難しいのではないか。
NFL 2015 -- Week 1
果たしてこの危惧は的中した。今季、レギュラーシーズンのほぼ後ろ半分をマニングはサイドラインで過ごすことになる。足底筋膜の断裂ということだったが、それだけだったのかどうか。week 17 の試合途中でオズワイラーをリリーフして登場し、そのドライブでタッチダウンまで持っていったのには唸らされたが、ポストシーズンにはほとんどロングパスを投げることはなかった。おそらくは限りなく「できなかった」に近かっただろう。
であるから、スーパーボウルのあとにおれはこう書いた。
マニングは多分、これで引退するのではないか。ブロンコスに移ってからの肉体的な衰えは隠しようもなく、特にこの二年のパフォーマンスの低下は素人目にも明らかだった。(…)それでも現役にしがみついていたのは、最後にもうひとつリングを取りたかったからに他なるまい。これで一応弟に並んだことになるわけだし、スーパーボウルの勝敗も 2-2 の五分に戻した。来季以降肉体がこれ以上衰えることはあってももう戻ることはない。それでも続けるとしたらもちろん見てみたいが、まあ、無いだろう、としか思えない。
NFL 2015 -- Super Bowl 50 @ LEVI'S Stadium
ただひとつ気になっていたのは、スーパーボウルの中継での解説河口正史氏の言葉だった。マニングは現役を続けると思うか、という問いに、「ブロンコスではもうないでしょう。でも、クオーターバックのいないチームに行って、また一から自分の力でチームを勝たせるみたいな形だったらやりたいんじゃないかと思うんですよ」というようなことを言っていたのだ。その発想は全くなかったけど、なるほどそれならあり得ないとは言えないと思った。


マニングがそういうことを本当に考えていたかはわからないが、単純に「続けるかどうか」を決断するためだとしたらスーパーボウルからこの発表までがいささか長すぎたのは確かで、さまざまな選択肢を検討したのかも知れない。あるいは単純に、わかっていても気持ちの整理に時間がかかったのかも知れない。ともあれ、ペイトン・マニングはフィールドを去る。特にひいきにしていたわけでもないけれど、やっぱりいなくなるのは寂しいものだ。


おつかれさま、ペイトン・マニング。またいつか、どこかで。