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『シャーロック 忌まわしき花嫁』 BBC,2015

どこの誰が考えた商売か知らないが、BBC の人気シリーズ「シャーロック」のシーズン3とシーズン4の間に放送されたスペシャル版を日本ではスクリーンにかけてやろうということになったらしく、劇場で上映されたのがこの作品。


追記(2016-03-24):
これは日本に限った話じゃありませんでした。すみません。Wikipedia 頼りだけど「香港、デンマーク、オーストラリア、フィンランド、英国、米合衆国、イタリア、韓国、日本」辺りでだいたい同様の形式(前後に「ドラマシリーズのベーカー街 221B を訪ねる」とキャストインタヴューがついている)で公開されたとのこと。


そういうわけなのでものとしては「90 分のテレビドラマ」に他ならず、独立した作品とはいえシーズン3までを観ていることは完全に前提とされているので、万一テレビシリーズ見てない人が「へー劇場版やるんだ」みたいな感じで観に来たらそこそこ悲劇だったのではないかと思われる。90 分じゃ短いと思ったのか知らんけど本編の前後にメイキングみたいな短い番組がついてくるし。で、シーズン4の前には絶対テレビでやるに違いないのだけど(なにしろシーズン4は本国ですら 2017 年中、みたいな先なので)、まあそこはファンなので行っておこうかというところ。


とはいえこれ、そういうわけで感想書きづらい。少しでも内容に踏み込もうと思うとテレビシリーズの方のネタバレになるからだ。ネタバレをなるべく避けつつぼんやりした感想を箇条書き……と思ったけどやっぱり内容にも触れたいのでネタバレのところは色変えてみた。古典的すぎるやり方だ。

  • 「なるほどこれやりたかったんだろうな」というのは随所から伝わってきて、それは中々よかった。まあそもそもヴィクトリア朝を舞台にするというの自体が要するにやりたいからやってるんだなというのはわかった。
    • でもそれだったらもうこれ完全にお遊びの番外編のポジションでよかったのでは……とは思う。たぶんこれやりたいというのとは別にジムの再登場についてシーズン3の最後であまりにとってつけたようなシーンになっちゃってたからシーズン4の前にちょっと整理しておきたいみたいなのがあったんだと思うんだけど、そのふたつを詰め込んじゃったからごちゃごちゃしたし少し無理のある話になってると思う。
  • 過去編のトリックとか「犯人」とかはまあいいんじゃないかな、という感じだったけど、あの組織が KKK もどきみたいなヴィジュアルだったのは微妙だった。
  • それはそれとしてシーズン4に戻ったところでジム本人は復活せんじゃろ、とは考えざるを得なくて、そうなるとああやってメディアやネットワークを通してあたかも生きてるみたいに振舞う、みたいな展開になるんだろうかと妄想するわけだが、どうなるんだろね。
  • 最後、ヴィクトリア時代のふたりが語らうシーンで終わるのはすごく好きで、だって物語の展開上ヴィクトリア時代のシーンは全部ラリったシャーロックの妄想であるはずなのに、それが存続しているかのように終わるのがとてもよかった。ある種のパラレルワールドというか、いやこういう世界線も存在しえたはず、という製作者からのメッセージみたいに思えた。
  • ちなみに泊まり勤務の日の午前中に観に行ったが劇場はがらがらであった。新宿の TOHO シネマズだったが 30 人ぐらいだったと思われる。まあ火曜日の 11 時とか混んでる方がおかしいといえばおかしいが。その日は妻と見に行くつもりだったのだが、娘がものの見事に熱を出してぽしゃった。ありがちすぎるが本当に泣けた。妻もなんとか後日タイミングを見つけて観ることができて、そのあとふたりであれこれ語った。一緒に見られないのは悲しかったが、別々に観て話をするとそれはそれで違った面白さがあるものだと思った。悲観したものでもない。