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『結婚式のメンバー』 カーソン・マッカラーズ著/村上春樹訳 新潮文庫,2016



『結婚式のメンバー』 ISBN:9784102042021


アメリカ合衆国の田舎町に住む 12 歳の少女のひと夏の物語。主人公のフランキーと、近所に住む7歳の男の子ジョン・ヘンリー、そして料理女のベレニスが主な登場人物のすべてで、フランキーにとってそこはどうしようもなく閉じた世界なのだけど、にもかかわらず彼女は他にいる場所がない。暑い午後三人で手脂でぎとぎとになったトランプで延々と遊ぶみたいな場面があって、それは閉塞感よく出てるなと思った。たった三人でトランプやり続けるのけっこうきついよ。


そこへフランキーの兄が結婚するという知らせがもたらされる。結婚式に列席することになったフランキーは舞い上がって、これこそが自分を外の世界へ連れて行ってくれる機会だと信じ込んでしまう。ここら辺は正直感覚としてはよくわからなかった。おれはすごく見通しのいい場所で生まれて、たぶんその気と努力さえあれば道はかなりいろいろなところへ通じてたからだ。もちろん感覚としてわからないからといって伝わるものがないわけではない。のだけど、その根っこの切実ななにかがおれのどこかにつながってるかははっきりしなかった。


とはいえ、そんな舞台と状況の話なのにちゃんと読ませる力はあって、結構あっさり読み切ってしまった。最後はけっこうびっくりする変化がもたらされて終わるのだけど、これは結構腑に落ちる感じがした。いろいろなことは時にかようにあっさりと覆されるし、そこにはびっくりするほどなにも残さなかったり、あるいは逆に致命的な傷痕を残していったりして、それが鮮やかに描かれていたのはとてもよかった。