黄昏通信社跡地処分推進室

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Gとの対戦

夏合宿に行ったときにそこそこ大きな蜘蛛が出没して、丁重にお引取りいただく役をおおせつかったのだが、その時に家にその手の――見た目アレだけど無害ないし有益な――虫さまがおいでなさったときの話になった。おれのそういう時の対処は「倒せそうなら倒すが物陰とかに引っ込んでしまったらほうっておく」というものだったのだが、妻によると「そうじゃなくて見かけた奴はやっつけてほしい」のだそうだ。「また出てくるかもしれないので落ち着かない」というのである。その場にいた他の人もそうだよねみたいなリアクションだった。そういうものかと思った。おれは本気でその辺の感覚がよくわからない。また出てきたらその時はその時だし、ひとたび出てきたからにはこの家にその虫がいることだけは確実になったと言えるけれど、判明した今となってはその虫が出てくる前と状況は全くおんなじだ。それであれば、虫が出てくる前に平穏で居られたように虫が引っ込んだ後も平穏で居られるべきではないか。というかおれは実際結構そのように平穏に戻れるのだが、そうでない人も多いのだろう。というわけでそれからは見かけたらやっつけるという心算でいる。


そしたら先日、風呂場でGを見かけた。そのときは家におれしかいなかった。倒す一択である。ばしむばしむと叩き潰し、しかるべく処理した。何日か忘れていて、思い出したときに妻に話した。どうやらあんまり聞きたくなかったようだった。わざわざ話す必要はなかったのか。またまちがえた。しかし一匹いれば三十匹というあいつがこの家に居るという認識は共有するべきではないだろうか……とここまで書いて気がついたが、この場合たぶんおれは黙って駆除に乗り出すのが正しいのだろう。そして妻がそれに気づいたときに「じつは……」と打ち明ければよい。おれがしたことは真逆である。というか根本的に虫の駆除に対する熱心さが足りない。まあ上で書いたように目の前に居なければ平穏でいられるという性分なのでなかなか熱心になれないわけだが、それじゃいかんのだろうな。