- 作者: 青山潤
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2009/01/15
- メディア: 文庫
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なにしろ金がない。アフリカとはいえ安宿を探す。そうすると値段相応にひどい。そもそもアフリカの田舎なんだからまあ立派なホテルはないわけだが、それにしてもほんとうにそんなことあるのかというレベルでひどかったりする。トイレを誰も流してなくてうんこが山盛りとか、それはもう田舎だからとかそういう話ではないのではないか。
そんな環境でウナギを探すが、もちろんそう簡単には見つからない。これは文化的にしょうがないのだろうけど、そもそもアフリカの人はウナギについてなにもわかっていないというかほとんど興味もないらしい。標本を集めるときには地元の人に捕ってもらって買い上げるのがわりと一般的なやり方のようなのだけど、まずウナギとはなんたるかというところから始めなければならないらしい。それで、わずかな、あいまいな手がかりを頼りに、ここぞというところに移動してしばらく腰を据えて聞き込みや買い取りを行う。その移動もバスであったり、ひどければヒッチハイク的にトラックなどに乗せてもらったりして、どちらにしても路面はでこぼこだし車もオンボロだし、読んでいるだけで腰が痛くなりそうだ。
そんなわけでやっていることは滞在としてはそこら辺のバックパッカーと変わらない水準で、目的としては前人未到の研究で、しかし言いづらいが、研究そのものはウナギの標本を集めるという「そこまでしなくても……」などとうっかり言ってしまいそうな内容だ。その二重にねじれた矛盾を抱えた滞在は、長引くにつれて著者たちを苛んでいく。このあたりは研究者の書くエッセイならではの読ませどころ。
とはいえ全体には明るくはちゃめちゃで前向きで、よくやるなあ、と感心するような空気に満ちていた。これを例えば中高生が読んで「フィールドワークやってみたい……!」ってなるかというと一般的にはだいぶ疑わしいものの、それだけに確かにある種の魅力がこもっていて、何百人かにひとりはこの本のことが強く心に残るようなこともあるのではないかと思う。
本書はそこそこ売れたようで、著者はこのあと類書を二冊出しているようだ(『うなドン 南の楽園にょろり旅』『にょろり旅・ザ・ファイナル 新種うなぎ発見へ、ロートル特殊部隊疾走す!』)。きっとある程度以上は面白いだろうけど、そこまではつきあわなくてもいいかな、というのが個人的な評価。