黄昏通信社跡地処分推進室

黄昏通信社の跡地処分を推進しています

『亡霊星域』 アン・レッキー著/赤尾秀子訳 東京創元社:創元SF文庫,2016-04

亡霊星域 (創元SF文庫)

亡霊星域 (創元SF文庫)

『叛逆航路』の続編。さらに続編があって三部作なのでこれはその真ん中ということになる。前作ではけれん味たっぷりの設定の下で展開される比較的王道の物語がページをどんどん繰らせる力があったが(参照→おれの感想)、今作はそれと比べるとかなり停滞気味と言わざるを得ない。


一応書くと、ブレクはいろいろあってひとまずは過去を隠して人間として艦隊司令官として着任する。そしてラドチ化を進めつつある星系に派遣され、現地のひとびとと直接触れ合う。通常その立場に居る者が敢えてしないことをブレクはためらわずにする。そのことが周囲を動かしたり事件の引き金になったりして、そういったことを通してラドチの社会と、辺境の星域の自然や人の暮らしが描かれていく。その中でブレクの想い人の縁者が登場して淡い思慕が垣間見えたりとか、星系の現地人とか先住民とかの世界が登場したりとかして悪くはないのだけど、前作で提示されたアイデンティティの問題とかは棚上げされ、別の方向から掘り下げられたりするようなこともない。その辺りは大いに物足りなかった。


前作の時点では「おもしろい! 三部作全部読む!」みたいな感じだったのが今の時点では「うーん、まあここまで来たから最後も読んどくかなあ……」ぐらいにはテンションが落ちている。というか実際本書を読んでからこれを書くまで二ヶ月ぐらいは経っているはずだがまだ次読んでないのでまあお察しという感じである。