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『ヒュレーの海』 黒石迩守著 早川書房(ハヤカワ文庫 JA),2016-11

ヒュレーの海 (ハヤカワ文庫JA)

ヒュレーの海 (ハヤカワ文庫JA)

第4回ハヤカワ SF コンテスト優秀賞受賞作品。遠未来、大変動に見舞われた地球では地表は「混沌(ケイオス)」に覆われ、ある程度の情報強度を持たない物体は「混沌」に触れるとばらばらにされてしまう。人類は生体コンピュータとなって地下都市で暮らし、「地球の記録」からデータをサルベージして文明を保っている。そんな世界でも人々は大きく七つの国家に分かれ、それぞれの国家は特定の「概念」を求心力として存在している。主人公の少年と少女はそれらの国家からは半ば独立して存在する「ギルド」に属し、若いながらもサルベージャーとして活躍している。
主人公たちの失われたものへの憧れから物語は転がり始め、地表への冒険、「地球の記録」へのアクセス、魔法のような力を繰り出しまくるバトル、と次々にギミックが登場する。奇妙に軽い文体で、漢字にカタカナのルビを振った造語を全力で撒き散らしながら遠未来の社会を描こうとしてみせるスタイルはなかなかできるものではなく、その力任せなところは心地よくもあるし、概念が文字通り国家の中心になるなんてアイデアを臆面もなく突っ込んでくるところもよい。ひとことで言えば若い、ということになるのだろう。
それに乗り切れなかったのは、すなわちおれが若くないから、ということになろう。登場人物のデザイン、台詞やかけ合い、現代日本アニメなどからの引用、そういったものがすべてどこか上滑っているように感じられた。もっと若ければ乗れたのかというとそれはわからないのだけど、しかしこの表層におれはアジャストすることができなかった。





うーん。ちょっとなんと言っていいかわからない感じ。もう少し(読んでから)早く書かないとだめだな、ともあれ。