黄昏通信社跡地処分推進室

黄昏通信社の跡地処分を推進しています

NFL 2017 -- Super Bowl LII: Philadelphia Eagles (NFC #1/East) - New England Patriots (AFC #1/East) @ US Bank Stadium (Minneapolis)

二年連続スーパーボウルに進出したペイトリオッツ。なんだかんだ勝ち上がるのは本当に流石だし、ブレイディもまだ衰えは感じさせない。自身が 2003-2004 シーズンに記録して以来の二連覇を目指しての一戦となり、当然のように本命視された。
対するはイーグルズ・ジ・アンダードッグ。第1シードだったにも関わらず、エース QB の故障もあってプレイオフ二戦ではいずれもアンダードッグ扱いだったチームだが、ふたを開けてみれば堂々のカンファレンスチャンピオンだ。特に NFCC ではヴァイキングズを子供扱いしての勝ち上がりで、ここでもアンダードッグ扱いだったが、そこまで地力は劣っていないのではないかと思われた。
試合はイーグルズがほぼ常に先手を引いた。ゴール前まで迫りながら FG どまりというファーストドライブ、折角タッチダウンを決めながら PAT を決め損ねた二回目のドライブと嫌なムードが続いたが、裏を返せばそれでも得点を続けたオフェンスはほむべきであろう。前半はアジャイー、クレメント両 RB のランが結構出て、攻撃の軸になっていた。前半パントはわずか1回で、しかもそれがこの試合で両軍合わせて唯一のパントとなった。
ペイトリオッツは特に前半、もたつくイーグルズにおつき合いしてしまった感があったか。26 ヤードの FG をスナップミスで外してしまったり、こちらも PAT を外してしまったりと、普通にできていれば取れた得点を逃す場面が複数あった。
前半終了の少し前、イーグルズが決めたトリックプレイがこの試合の鍵だった。ゴール前1ヤードの 4th ダウン、イーグルズはショットガンの1バックでクレメントがフォールズのすぐ横に立つフォーメイション。ここでフォールズが右タックルの後ろまで歩いていって、背中に触れてなにか声をかける。その1秒後にスナップが出された。クレメントがダイレクトスナップを受けると左に走って WR バートンにバックトス。そしてバートンは右サイドのエンドゾーンに走っていたレシーバーにボールを投げる。ワイドオープンでタッチダウンレセプションを決めたのはニック・フォールズだった。
実は 2Q の頭にペイトリオッツがほとんど同じトリックプレイを試みていて(ゴール前ではなかった)、その時もブレイディはガラ空きだったがアメンドーラが投じたボールはわずかに長く、指先は触れたものの取ることはできなかった。同じトリックプレイの成否の差は、終わってみればこの試合の行方を暗示していたようにも思える。
そんなこんなで 22-12 で折り返し。


後半ペイトリオッツはお得意の最初の攻撃でタッチダウンにつなげる。前半あまり使っていなかったグロンカウスキーにパスを集中してあっという間にタッチダウンまで持っていった。やはりグロンカウスキーをシングルカバレッジで止めることはほぼ不可能で、チート性が高い。22-19 と3点差に迫る。そこからイーグルズはクレメントへのタッチダウンパス、エリオットの FG、と2ポゼッション連続で得点を挙げて逃げ切りを図るが、ペイトリオッツはさらにタッチダウンを2本続けてとうとう逆転してしまう。正直見ていた時には「とうとう来たか……」という感じで、やはりペイトリオッツが勝ってしまうのか、と思いながら見ていた。とはいえこの時点で 32-33、残り時間は 9:22 と充分すぎるぐらい残っている。再逆転の可能性自体は全然残っていた。
ここからのドライブが素晴らしかった。後半に入ってからアジャイー、ブラウント両 RB のランが出なくなる中、フォールズが短いパスで攻撃を継続する。自陣 45 ヤードで 4th&1 となったがギャンブル。試合後に「とにかく積極的になることを心がけた」と HC が語ったが、そうは言ってもこういう場面になるとつい委縮しがちなもので、攻めの姿勢を貫けたのは素晴らしかった。フォールズもそれに応えてぎりぎりで短いパスを TE ザック・アーツに通してドライブを継続させた。
残り 2:30、敵陣 11 ヤードでペイトリオッツはたまらずタイムアップを一回切る。3rd&7、フォールズの選んだレシーバーは再びザック・アーツだった。DB が足を滑らせてタックルできず、アーツは前方にカットを切って倒れこむ。ボールはエンドゾーンに着いて大きく弾んだ。タッチダウン。長い長いレヴューの末、判定が確定された。ツーポイントコンヴァージョンには失敗したものの、38-33 と5点のリードを奪う。
そして試合を決定づけるプレイが直後に飛び出した。残り 2:21、タッチバックで自陣 25 ヤードからのペイトリオッツの攻撃。一本パスを通して 2nd&2、ここでイーグルズのディフェンスラインがついに届く。右サイドからのパスラッシュがパスを投げようとしていたブレイディの腕にかかる。ボールがこぼれ、意外なほどあっさりイーグルズがリカバーした。この試合唯一のサックだった。
あとはイーグルズが 1st ダウンこそ取れなかったもののペイトリオッツタイムアウトを全部使い切らせてから FG を決めて 41-33。それでもペイトリオッツはヘイリメリーを投げるところまで行ったが、さすがに決まるものでもなく、イーグルズが勝利を決めた。


ペイトリオッツ/ブレイディ/ベリチックは 2003-2004 以来の連覇を果たせなかった。41 点失ったのだから守れなかったとは言えるだろうし、前半には細かいミスも相次いだ。とはいえ完璧な試合をできるチームなどない。4Q にいったんは逆転してみせたことこそがこのチームの底力であろう。ブレイディもまだ衰えからは遠いように見受けられる。少なくとも、三年前にペイトン・マニングがぼろぼろになりながらリングをつかんだ時よりはよほど若い。まだまだ活躍を続けるに違いない。
イーグルズはプレイオフに入ってから下馬評を覆し続けて、とうとう頂点に立ってしまった。実際バランスのいい強力なチームで、何故ここまで評価が低かったかはむしろ腑に落ちないところがある。MVP はニック・フォールズが勝ち取った。300 ヤード以上投げたわけだし文句はあるまい。2012 年シーズンにイーグルズでキャリアをスタートし、2013 シーズンにはプレイオフに残ったが一没。その後は出番を失いラムズにトレードに出され、さらにチーフスに移ってから、今季の開幕前にイーグルズに戻ってきた。コントロールがよく判断力に優れたシュアなクオーターバックで、2013 シーズンには TD/INT が 27/2 という記録も残している*1。力量に比すれば不遇なシーズンを重ねていただけに、今回のチャンスを活かして一気に頂点までかけ上がったのは本当にすばらしいし、おめでとうと言いたい。
来期ウェンツが戻ってくればもちろんウェンツがスターターに戻るのだろうから、フォールズはリングを手にしながら若干微妙な立場にあることになる。とはいえどこにでも行けるだろう。今後どれほど活躍できるのか、本当に楽しみだ。

*1:他にも一試合でタッチダウンパス7本決めてパッサーレイティング満点という NFL 史上唯一の記録も持っていたりする。