- 作者: R.M.W.ディクソン,大角翠
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2001/06/20
- メディア: 新書
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それと、少数話者になった言語は基本的には滅びる、と言い切っているのは面白かった。特に多数話者の文化圏と密接な関係を持つ場合はその傾向はくつがえしようがないのだという。少数話者のほうには多数話者の言語を学ぶインセンティヴが発生するが逆では発生しないし、親が自分の子たちには最初から多数言語を話させたりするし、というわけで殊更禁止とかしなくても滅びに向かうものらしい。これはすごく説得力があった。守ろうとする試みも、一時的な延命にはなっても恒久的な存続にはつなげることができないという。
言語の分化が今後は生じにくくなるかもしれないという話も面白かった。たとえばアメリカ英語とイギリス英語は多少分化が進み始めていたのだけど、ラジオやテレビのようなメディアでお互いが相手の英語に触れるようになってから明らかに再同化が進んでいるんだとか。これは本書が書かれてから十数年経ついまとなってはその傾向が強まりこそすれ弱まっているとは考えられない。技術の進歩はこういうことにも影響を与えるのだなと思う。
それで、著者は滅びゆく言語を記録しなければいけないという。言語というのは驚くほど多様な構造や音声を持っていて、たとえば舌打ち音を音素として持つ言語があるとか、他の言語で類を見ないほど特異な文法や話法を持つ言語があるとか、そう言ったことは記録しておかなければ永遠に失われてしまうからだ、と。その主張自体はすごくまっとうだと思うのだけど、著者がその主張に絡めて随所でフィールドワークしねえ言語学者はなってねえ、聞き取りしろ、記録しろ、みたいな個人的な苦言みたいなのをちょいちょいぶっこんでくるのは鼻についた。言わんとすることはわかるんだけど、わかったわかった、みたいな気持ちになる。
とはいえなかなか面白い本だった。言語の成り立ちとかに興味ある人は読んでみていいと思う。言われなくても読んでるような本なんだと思うけど。