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おれとシュマイザーロボ

というわけでシュマイザーロボの話でも。当時は浪人してたので地元でゲームやることが一番多くて、このゲームは渋谷の中央プラザでやっていた*1。おれはダリダリというキャラクターを使っていた。シュマイザーロボはタイトルの通りロボット格闘なのでロボットとパイロットがそれぞれいるわけだが、ダリダリはどちらも「ダリダリ」で、ついでに必殺技の名前も「ダリダリ」だった。ロボットのダリダリはいわゆるダルシム的な手足の伸びるロボだったのだが、常に逆立ちして頭を地面につけた格好で戦っていて、パンチは地面に沿って真横に伸び、キックは逆に斜め上に伸びた。必殺技のダリダリはパワーウェーブ系というか、地面を這うタイプの飛び道具だった。パイロットのダリダリはいかにもマッドサイエンティスト然とした風貌だった。要するにどっから見ても色物キャラで、しかしコテコテすぎてもはや投げやりさすら感じさせるようなキャラクターだった。なんでそんな奴を使っちゃったのかは全く思い出せないのだが、まあ使いはじめちゃったもんはしょうがないとは言えるだろうか。

使っていた、とはいえ、時は対戦格闘ゲームのまだ黎明期、筐体を背中合わせにくっつけて設置するいわゆる「対戦台」はまだ巷にはほとんどなかった……と、記憶している。あるいはあったのかもしれないがいずれにしてもシュマイザーロボには無縁の話だった。となれば対人で対戦するためには声をかけて隣に座らなければならない。当時を知る人はご記憶にあるかもしれないがこれはなかなかにハードルの高い行為であった。今でこそ対戦格闘の CPU 戦といえばよほどの初心者の練習か、さもなければせいぜい対戦相手の乱入待ちの暇つぶしというところだが、当時はまだまだひとりプレイがメインだった。そもそもシュマイザーロボをやってた奴がどれだけいたのだという話である。

というわけでひとりでダリダリで CPU 相手に戦ってたわけだが、記憶にある限りではこのゲームはメインキャラが七人(半端だった記憶がある)。なので CPU 戦は自分以外の六人と順番に対戦して、勝ち抜くとボスキャラ的な奴と対戦できて、それに勝てばエンディング、という流れだったと思う。ストリートファイター2以来の伝統という感じだけど、スト2ですら「四天王」がいたのにこのゲームはいきなりボスと対戦だった。
しかし結果から言ってしまうとおれは最後までボスと相まみえることができなかった。CPU の「ワルキュリア」がめちゃくちゃ強かったのだ。女パイロットの乗る、まあスト2で言えば春麗ポジションのキャラクターなのだが、こいつが使ってくるブランカのローリングアタックみたいな必殺技がダリダリだとどうにもならない。あらゆる技が出かかり、もしくは出てからつぶされ、ガードしていればじり貧、頼みの飛び道具ももちろんあっさり飛び越えてくる。当時のお約束で同じキャラでも序盤に出てくる方が弱かったのだが、ワルキュリアは二面で現れてもおれのダリダリを容赦なく屠った。

この話に特におちはない。おれはしばらくシュマイザーロボを続けたがとうとうボスには会えず、そのうち中央プラザからシュマイザーロボは姿を消して、そこでおれのシュマイザーロボキャリアもぶっつりと途切れている。
ずっと後になって、このゲームがチェーンコンボ、直前ガード、空中ガードや小ジャンプといった、のちの対戦格闘ゲームで採用されることになるいくつものシステムを初めて搭載した野心作だったらしいことを知った。先日のみんはやでこのゲームのタイトルを問う問題が出たときも、その事実を前ふりに使っていた。しかしそれを知ってからもおれにとってのシュマイザーロボはあの地下の薄暗くて意外と広いゲーセンで遊ぶ、逆立ちしたロボットが手足をびよんびよん伸ばすゲームのままだ。このゲームをリリースしたホット・ビィ社は、あと一作だけアーケードゲームをリリースした後に倒産している。

*1:「浪人中にゲームやるなよ」みたいなツッコミはあろうが、おれがそのような人間であったのならそもそも浪人していなかっただろう、とは言っておく。