黄昏通信社跡地処分推進室

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ジロ終わる

ジロが終わった。最終日が個人 TT というちょっと面白い趣向だったが前日までのカラパスのリードは充分すぎるほどだった。TT は得意ではないという評判の通り大きく上体をゆさぶる TT 向きとは言い難いフォームで、力をふりしぼってマリアローザを守り抜いた。中盤ログリッチェとニバリがお互いをマークするところで出し抜いてタイムを稼いだステージがあって、少し恵まれた印象もあったが、後半の安定ぶりは上位陣の中でも文句なしに一番だった。昨年までは白ジャージを着ていたというから、26 歳にして一気に頂点に立ったことになる。
ニバリは地元の期待を一身に背負って、それに応えるレースであったと思う。届かなかったのは展開の綾が大きい。しかし、それを覆すほどの圧倒的な力はなかったということだろう。

初山翔は初出走ながら完走を果たした。二回逃げに乗り、フーガ賞は6位だったという。第3ステージでひとりで 100km 以上逃げたことと、若いころイタリアのユースチームにいたためイタリア語が話せることで注目を集め、本人曰く「この三週間でプロになってからの 10 年間で受けたのと同じくらいの回数のインタビューを受けることになりそう」というほどの大フィーバーとなった。残念ながら最下位でのゴールだったが、主催者から特別に最下位の証である黒ジャージ「マリア・ネッラ」を授与されたという。これは 50 年ほど前の一時期だけ実在したジャージで、ジロ・デ・イタリアを誰よりも長く楽しんだ者に与えられたものであるらしい。いずれにせよ完走は偉業と呼ぶべきであろう。ほんとうにおつかれさまでした。

栗村修氏のブログから引用。
https://news.jsports.co.jp/cycle/blog/kurimura/2019/05/post-1209.html

彼らはいま「時代を繋ぐ作業」を担っています。
別府史之選手や新城幸也選手に続く選手がなかなか現れないのは、彼らと同等以上の才能を持った日本人が自転車ロードレースの世界に入ってきていないからです(才能とはメンタル・フィジカル両面)。

いつか必ず我々の目の前に現れるであろう「怪物」を発掘するために、様々な形で「時代を繋いでいる存在(レース開催やチーム運営、そして自らの限界を悟りつつも走り続けている選手たち)」がいることを、頭の片隅に入れておいていただければ幸いです。

しばしば道化のように振る舞っている栗村氏の、こういうときに見せる優しさが好きだ。栗村氏は自身も 20 代で選手を引退して、それから後進の指導、発掘、育成、そして自転車競技そのものの認知の拡大のためにずっと活動を続けている。たぶん苦しいことも上手くいかないことも多いだろう。どう考えても規格外の別府、新城というスターが現れてくれてすら、日本では自転車競技はマイナー中のマイナーのままでいる。それでも前を向いて、ペダルを回している。誰よりもこの人が時代を繋いでいる存在なのだ。
いつかこの人の前に怪物が現れますように。その怪物が自転車を選んでくれますように。