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聖戦記エルナサーガ

ごろごろしながら『聖戦記エルナサーガ』を読んでいたら一日終わってしまった。
このブログを検索してみたらこの漫画に言及していなくて逆にびっくりしたのだが、個人的にはけっこう好きな漫画だったりする。「その昔勇者が魔獣を倒したが、魔獣は死してなおその死体から魔風を放ち続けた。勇者は封魔剣〈グランデイン〉をノルズ山の上に突き立て、魔風は封魔剣を避けて左右に分かれた。分かれたその風下に世界ができた」という創世神話を持つ世界の物語で、人はその限られた世界の中をアンサズ、アーサトゥアル、グートランドという三大国家で分け合いながら暮らしていた。しかし年々魔風は勢いを増し、風下にある世界はその領域が少しずつ狭まってきて、三国の領土争いは激しさを増していた。そんな中、アーサトゥアルにまったく魔法を帯びない「闇の姫御子」エルナが誕生する。この世界では基本的には誰もが弱かれ強かれ魔法を帯びていて、封魔剣は人間の身体の魔法にも反応するので誰も触れることができないはずだった。ところがエルナは魔法を帯びないがゆえに封魔剣に触れることができてしまう。封魔剣を動かすことができるのは魔風を操ることができるのとおなじことであり、魔風を操れれば世界を思うがままにできると言ってもよい。その噂を聞きつけたアンサズの第九王子シャールヴィが、エルナを奪うためにアーサトゥアルの王城を急襲する……というところからストーリーが始まる。エルナはおてんばだがかよわい姫君で、魔法が使えないし治癒魔法もまったく効かないのでこの世界ではめちゃめちゃ弱いのだが、封魔剣とおなじ性質を持つ封魔短剣〈グランクニーヴ〉だけを唯一の切り札として持っている。シャールヴィは怪力無双で魔力も抜群、勇猛果敢で戦では自ら先陣を切るという古典的なヒーローで、エルナを奪い去ることには成功するが、アンサズに戻ることはかなわずエルナとふたりでの逃避行が始まる。エルナを手に入れようとする三国の動きをよそに、アーサトゥアルを実質的に支配する大魔道士ヴァーリは、狂戦士や魔法剣、核爆などの禁呪を次々に使って戦争を有利に進める。エルナは諸国をさまよいながら、戦場での一兵士の死に涙を流し、世界の正しさについて疑問を持ち、争い続きの世の中をなんとか変えたいと考え続ける。その純粋な心に最初はシャールヴィをはじめとした周囲の人間が、そして次第次第に多くの人が動かされてゆく。いい味を出しているのが道中で出会う盗賊団の下っぱラタトスクと、最初エルナを殺しに来たグートランドの女騎士ラヴァルタ。ラタトスクが矢を受けながら叫ぶ言葉と、ラヴァルタの物語を通しての高潔な振る舞いは印象に残る。ヴァーリにいいようにされていたアーサトゥアルの若き王であるエイリーク(エルナのいとこ)もエルナに感化され、とうとうヴァーリとの決戦を決意する。勝負の行方はいかに、戦争は、魔風はどうなる、そしてエルナが見つけるなすべきこととは——みたいな話。絵柄は正直今見ると古いけれど漫画としてはかなりうまく、こういう絵できっちり迫力のあるアクション描ける人って結構珍しいと思う。北欧風のフレイバー(衣装のデザインや呪文の詠唱)もいい味を出していて、世界の雰囲気に一貫性がある。一話からかなりテンションが高いんだけど、展開が早くて最後まで全然テンションが下がらないのもすごいところ。というわけであらためて読み直してみたけど大変面白かった。しかし残念ながら絶版なのだよな。というわけでマンガ図書館Zで読めてしまいます。こういうの好きな方はぜひ。→https://www.mangaz.com/book/detail/74741