黄昏通信社跡地処分推進室

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The Typhoon Family

未明、隣の、窓に近い側の部屋で寝ていたはずの妻が「風の音がこわい」と言って布団を引っ張ってきておれの布団の隣に並べてきた。おれは半分寝ぼけていたが手をつないであげた。そのまま朝まで寝た。朝起きたらもう雨は止んでいたが、風はまだけっこう強かった。しばらく電車が動かないことは確定していたので家で待機し、動き始めたぐらいで駅に向かった。近所の緑道には落ち葉とか小枝とかがどっちゃり落ちていた。駅に着いてからは悲惨の一言だった。来る電車来る電車超満員、文字通り乗ることすらかなわず何本も見送る。陽が出てからは天気予報の通り気温は上がり湿度も高く、普段よりかなり人が多い駅のホームはさながら蒸し風呂のようだった。四本見送って五本目に意を決して乗ってみるが、半分けつがはみ出しながら乗っているのに人が多すぎて扉すら閉まらない。駅員さんが真後ろに来る。「大丈夫ですかー」 ……大丈夫に見えるかこれが?! まあ「降りろ」の婉曲表現だったのだろうが、無理矢理身体をねじこむとずずっずずっと扉が閉まりはじめ、最後はおれのズボンの尻部分を挟みながら完全に閉まった。普段の倍以上の時間をかけて電車は乗換駅に着いた。ひどく汗をかいたのでアクエリアスを買ったら一本空けてしまった。結局職場に着いたのは昼前だった。どーしても行かなきゃならない業務ではなかったが、ふたりのチームでもうひとりが休暇を取ってたのでおれが行かないと作業ができなくはあった。とはいえ、それさえも最悪できなければできないでまあしょうがないねで済むものではあった。ちょっと判断を誤ったかなとは思う。