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『ダウントン・アビー』 マイクル・エングラー監督 ユニバーサル,2019

なんとかまだやってた、映画『ダウントン・アビー』@新百合ヶ丘イオンシネマ。時期はドラマ版が終わったちょっと後*1。なんと国王陛下夫妻がダウントンに一泊することになって、それが三週間後(だったかな?)。使用人たちも大いに張り切り、先生として就職したはずのモールズリーさんまで噂を聞きつけて休暇を取ってきちゃうはしゃぎよう。ところが王家からは自前のシェフや使用人たちが先遣隊として送り込まれてきて、「料理も給仕も全て自分たちがやる」と宣言する……
冒頭のシークエンスが素晴らしい。国王陛下の来訪を知らせる公文書が、美しいカリグラフィーで書かれ、色鮮やかな蝋で封をされ、宮殿から郵便配送ルートに乗って送られていく。駅に着き、鉄道に乗せられて、SL が走り出してダウントンへ向けて、さらに郵便配達夫へ、そしてダウントンの屋敷の中まで運ばれていく、そこまでがおそろしくテンポのいいカットでつながれる。ただ「国王陛下からの書状が届いた」ことを示すためだけに! どれだけ金かかってんの?!
とまあ万事こんな感じの、ひとことで言えば「公式がふんだんに金使った二次創作」みたいな映画だった。ファンとして見れば満点だし、テレビシリーズを見ていない人はおそらく最初から眼中にない(よく日本で公開したものだと思う)。そういう位置付けのミッションとして評価すべき。

というわけで感想はネタバレする。

  • メアリー様は相変わらずお綺麗であった。
  • イーディス様は相変わらず不幸であった。もう、序盤で「ドレスはいま注文してるの」と聞いた瞬間に嫌な予感しかしなかったし、中盤ものが届いたときには「あれ?」とすら思った。あと試着したときちらっと見えた脚がめちゃめちゃ綺麗だったな。
  • ブランソンは相変わらずおいしいところを持っていく。この人もわりと間抜けなことしたりしてるのだが比較的咎められない役柄という感じ。
  • トーマスはよかったねとしか申し上げられない。いやまあ結構やなやつなんだけどさ……それでも人間なんていいやつばっかりでもいいところばっかりでもないわけで、この時代にこういう風に生まれついた不幸ってのは今よりさらにずっと大きいんだろうし、と思うとなにかどこかで幸せをつかんでほしいとは思うわけです。少しでも長くよき時間を過ごせますように。
  • アンナ、よかったですね、大変よかった。アンナびいきなので今作のシナリオは嬉しかったです。悪巧みもかまをかけるところも魅力的でした。妻曰く「さすがベイツ夫人」。
  • シナリオ自体はここで終わってもいいし続編があってもいいしみたいないい塩梅で終わっていた。実際興行収入次第でオプションがあるのかもしれんし、今はなくてもその目を残しておこうみたいな判断自体は全然不思議じゃない。その中で、おばあさまがはっきり「わたしはもう先が長くないから」とおっしゃっていたのは気になった。はっきりいってこの科白全然要らないからね。だからおそらくマギー・スミスは次作があっても出ないんじゃないかな。それを観客に(そして製作陣にも)伝える意図のある科白だったんじゃないかと、おれは思った。

あとブログで感想書いてる人探したらわりと上位に出てくる人がふたりともすごい勢いで「トーマスよかったね!!」ぐらいのテンションで書いててこれは……と思ったんだけど「20年代にもなってブログに映画の感想をそこそこの長文で書いてる人」という時点でそれなり以上のバイアスかかってそうだな。

以上でーす。

*1:二年後だそうです