- 作者:ジャスパー・フォード
- 出版社/メーカー: 竹書房
- 発売日: 2019/06/27
- メディア: 文庫
- 作者:ジャスパー・フォード
- 出版社/メーカー: 竹書房
- 発売日: 2019/06/27
- メディア: 文庫
聖グラナータ後継養育院という孤児院的な施設で育った主人公チャーリーは、ちょっとしたきっかけから冬季取締官に就任する。燃料や暖房の管理、ナイトウォーカーへの対処、冬眠せずに徒党を組んで街を襲う盗賊たちへの対処、などなど冬の間にもいろいろな仕事があるので全員が冬眠してしまうわけにはいかない。そのなかで特に警察的な荒事を扱っているのが冬季取締局で、そこに勤めるのが冬季取締官だ。いい噂のない区画“セクター 12”へ向かったチャーリーは本来であれば本格的な冬を迎える前にカーディフに戻れるはずだったが、いくつかの偶然と作為によってセクター 12 で冬を越すことになってしまう。チャーリーは不本意ながら泊まることになったホテルで、ベルギッタという美しい絵描きの女性と出会う。
ひたすら暗くて寒い冬のイメージが鮮烈で、その冬を冬眠で乗り越えようとする人間たちと、眠らずに過ごす主人公というシチュエイションがたまらなく魅力的だ。どんなに着込んでも圧倒的な寒さの前には人は無力で、街路に張りめぐらされたガイド用のロープから手を離してしまったら命の危機となる。同僚や上司の取締官も信用できるのかどうかわからない。そこにどういうわけか複数の人が見ているという「青いビュイックの夢」や、冬眠時の生存率を高める薬「モルフェノックス」とその製造を一手に引き受けている会社「ハイバーテック」、実在するかどうかもわからない冬の魔物「ウインターフォルク」などの話がさまざまに絡んでくる。ここら辺、正直現実世界とはかなりかけ離れてる設定もあるのだけど、圧倒的な冬のイメージを背景に描かれるとなんとなく納得してしまうのだよな。オーロラとトッカータの設定とか相当いかれてるし。そのあたりはファンタジーと呼んでさしつかえないかと思う。
二転三転のどんでんがえしの後、物語はひとまずの着地点にたどり着く。ベルギッタについてはちょっと切ない幕切れなのだけど、それも含めてなかなかよかったです。後半の強引な展開を嫌う人はいそう。
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ていうかいつ読んだんだっけこれ……